平成一桁台まで、農家は使い過ぎて痩せた土地に大量の化学肥料を撒き、強制的に野菜を育て上げた。虫食い野菜は商品価値が下がることから、殺虫剤を撒き散らし高く売れる作物を作って生活を守った。国による農薬規制もなく、スーパーも消費者も綺麗な野菜を求めた結果、度を超して使用された作物の農薬による健康問題（アトピー問題など）が発生したのである。とくにサイズまで指定するスーパーの功罪は大きいが…。

　社会問題というのはどこの国も同じで、メディアが大きく取り上げられない限り、動こうとしない。政府と企業との関係から、国もマスコミも人的な問題が発生しない限り、化学肥料業界や農薬業界を一方的に叩くことや規制することはない。

　後手後手の行政のなかで、規制をかける農薬の（人体に影響の少ない）代参品の開発を促し、大量生産できるところまで来なければ規制しないのが常である。水面下で農薬問題が生じた場合、それまでの使用量の目安を少なく指導させたりして事を運ぶ。

　しかし、健康を意識する層では、有機栽培の農産物を生協（福岡ではとくにグリーンコープ系統）や有機栽培農家から直接購入するなどしている。有機野菜を生産する農家も大量生産は無理にしても、手間隙かかるが比較的高く売れ、生産者側の健康も守れることから、確実に農家に広がりを見せている。
　国と企業は、農協を使い農家を利用してきたが、今では農協解体論もある。しかし一方で、農協の若手中心に農家に低農薬・有機栽培の指導もしている。

※飲食業者の動き ⇒ 居酒屋など飲食店から大量の食べ残しの野菜や魚、肉などが大量に発生するが、地域の飲食店が共同してリサイクルを行なっている。残飯の堆肥プラントを作り農家に販売、農家と提携して作られた有機野菜を、当該飲食店が購入して料理に使用している。まさにリサイクルである。

※青果市場の動き ⇒ 八女市の青果市場では大量の野菜くずが発生する。しかし同市場だけではリサイクルするには足らず、周辺の青果市場からも集めて、堆肥プラントを稼動させている。生産された堆肥は農家に格安（初年度は無料配布）で販売されている。農家も鶏糞と牛糞などともに農地に馴染みやすく、野菜も元気に育つことから喜ばれている。

　上記２例とも、これまで産廃業者にお金を払って処分してもらっていたことから、（初期投資額は別にして）格安で販売しても採算に合うようになる。
このように生ゴミを発生させる側からも意識革命が生じており、農家や市民も健康＝有機野菜の意識が拡がりを見せている。

　熊本市のレストラン「ティア」は、「浜勝」の元代表が、自らの思いを実践している有機栽培の自然食レストラン。魚市場と組み、サイズ除外品（売れないサイズの大と小の魚）を有効活用するシステムも作り上げている。それまでは、形状が悪いことから売れずに捨てていたものである。同氏に賛同した店舗が全国に少しずつ増加している。

　また「ティア」では、ピアノ発表会、結婚披露宴などの会場としても利用も可能。定期的にチャリティーコンサートを開催して、知的発達障害のある人たちにスポーツ活動の支援をするボランティア団体にも協力している。

※ 恐ろしい話であるが、農薬や化学肥料の成分は土地の中で生きており、簡単には劣化しない。長期間で見た場合食物連鎖の問題も残る。