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特別取材

【特別寄稿】「今後の世界経済、金融の状況」 副島隆彦
特別取材
2008年9月 2日 12:00
副島 隆彦(そえじま たかひこ)プロフィール

 1953年5月1日、福岡市生まれ。本籍・佐賀市。早稲田大学法学部卒業。銀行員、代々木ゼミナール講師を経て、現在は常葉学園大学教授。
政治思想、法制度論、経済分析、社会時事評論などの分野で、評論家として活動。近著:『時代を見通す力』PHP研究所刊(2008年8月)
日米の政財界、シンクタンクなどに独自の情報源をもち、日本人初の「民間人・国家戦略家」として、日本は国家として独自の国家戦略を持つべきだ、と主張している。副島国家戦略研究所(SNSI)主宰。

 7月13日に、ヘンリー・ポールソン米財務長官が、議会議事堂(キャピトル・ヒル)で単独で、記者会見をして、アメリカの巨大な政府系の住宅公社である、ファニーメイとフレディマックが発行している、総額で5.3兆ドル(600兆円)の債券が信用不安を抱えていることを公表した。この住宅公社の発行する債券は2種類あって、政府系金融機関である自社発行の機関債と、それからサブプライムローンを組み込んだ証券化商品の2種類である。ここから世界の金融事情は、さらに新たな段階に突入した。

 同日、アメリカの財務省は、それとなく、「これらの5.3兆ドルの債券のうち、1.4兆ドル(160兆円)が外国政府および外国の大手金融機関である」と発表した。その中に、日本の農林中金が5.5兆円、三菱UFJが3.3兆円、日本生命が2.6兆円をそれぞれ購入していることが明らかになった。

 この日から、世界の金融と経済の動きの新しい激動が始まった。日本は、どのようになってゆくのか? 農林中金の再編・統合は避けられなくなっている。いくら資金の運用総額が58兆円あると言ってみても、5.5兆円の債券が焦げ付きそうだと、さすがの農林中金でも経営基盤が傾くだろう。フェニーメイとフレディマックの債券については、米国政府(財務省)が、公的資金の投入(tax money injection 税金の投入)によって資本増強して保証するという動きをしているように見えるが予断を許さない状況である。この7月13日から、日本国内でも、GSE(ジー・エス・イー) 、Government Supported Enterprise ( ガヴァメント・サポーテッド・エンタープライズ)というコトバが新聞記事でも使われるようになり、「ファニーメイとフレディマックは、政府支援企業であるから、米政府が国有化して債券の支払いを全額保証する」という強気の論調がまかり通っている。果たしでそうだろうか。この「サポーテッド」は、決して、「米国債と同様に米政府が償還を保証している」という意味ではない。法律上の政府保証はついていないのである。「実質的に米国債と同じぐらいの信用性の高い債券だ」というのは、日本側で勝手に使われている説明に過ぎない。これからの動きが注目に値する。

 それでもなお日本経済の底力は強い。諸外国(ロシア、中国、イラン他、中東諸国)が、日本の株式と日本国債を密かに買いに来ているようである。アメリカ経済はさらに弱体化し、金融機関は破綻してゆくことが避けられない。「ドル覇権の崩壊」が起きて更に衰退してゆく。私は、『連鎖する大暴落』(徳間書店、2008年3月刊)に続いて、この9月初めに『恐慌前夜』(祥伝社刊)を出した。ご高覧を賜りたい。この本でも、(1)金利、(2)為替、(3)通貨量(ベースマネー、マネーサプライ)、(4)株式、(5)国債(債券)、(6)金(きん)、石油(原油)・不動産の最新の動向を書いた。前年の2007年の7月に出した拙著『ドル覇権の崩壊』(徳間書店刊)での予言が大きく当たった。昨年8月17日から起きたサブプライムローン金融危機で世界は大きく変わった。戦後の世界体制そのものの変更である。ブレトンウッズ体制(1944年7月、IMFと世界銀行が出来た。金ドル兌換体制)は、27年目の1971年8月のニクソン・ドルショック「修正金ドル体制」になって修正を迫られ、以降は「ロックフェラー・ドル石油体制」であった。これがやがて崩れてゆく。その節目となる年は、再来年の2010年であろう。

 それでは、私たちはこの金融恐慌の時代に、何に投資するか。やはり金地金(きんじがね)をもっと買うべきである。現在1グラム2,900円前後である。8月中旬に2,800円台にまで落ちたが再び除々に持ち直している。これがやがて4,000円、6,000円を目指す。為替は、現在1ドル110円台の円安・ドル高となっているが、年末には再度の100円割れを起こし1ドル=80円を目指してドルは暴落してゆく。大切な自己資産の一部を、香港・シンガポール等の国外に逃がすことが大切である。アメリカ国内のヘッジファンドは崩れた。しかし欧州勢はものすごくつよい。欧州系のヘッジファンドを買うことを薦める。米ドル(および米国株と今後は米国債も)を売り崩すことで利益を出す欧州人の構えがすばらしい。アメリカ国内では、ゴールドマン・サックスの一人勝ちである。日本国内でも、三井・住友=欧州ロスチャイルド勢力の勝利が起こりつつある。米ロックフェラー財閥系であるシティグループ(シティバンク)その他は、いくら大銀行(メガバンク)、大証券会社、大保険会社と言っても3年以内に多くが破綻し消滅(救済合併)されてゆくだろう。GS(ゴールドマン・サックス)以外の大証券は破綻する。

 アメリカは世界中から資金を呼び込み過ぎてその運用に失敗していることが大きく露見してきた。アメリカの金融ファンダメンタルズの脆弱さは変わらないので、政府と当局は必死で立て直そうとしている。1月21日のフランスの大手銀行のソシエテ・ジェネラルの破綻が引き金となった「世界同時株安」を収めて、その後の4月危機、7月危機もなんとか回避された。3月中旬にドル防衛(ドルの下落を阻止する)ための各国協調での極秘の為替介入が実行されたことが明らかとなった(8月28日付け『日本経済新聞』)。  
 4月11日のワシントンG7(主要国蔵相中央銀行総裁会議)で各国代表はアメリカに苦言を呈した。IASB(国際会計基準評議会)の現行の時価会計の見直しをアメリカが提案した。それとBIS基準の見直し問題である。IFSD(International Finance Settlement Directorate)のトゥーディ議長は反対した。ドイツ連銀のアッカーマン議長も反対。ECB(ヨーロッパ中央銀行)のトリシェ議長も反対。日本の額賀福四郎財務相も反対した。3月11日にFRBは対応に迫られて、流動性危機に陥った銀行への「国債貸出制度」(TSLF、Term Secured Lending Finance)を制定した。ヘンリー・ポールソン財務長官の金融改革案(2008年3月31日発表)は「FRBに全ての権限を集中させる」であった。いよいよ世界は緊急の金融統制体制(ネオ・コーポラティズム社会)に入ってゆく。簡潔に言えば「預金封鎖」への道である。

 主要証券会社を支援するための米国債の貸し出しを許すPDCF(Primary Dealer Cash Finance 、連銀窓口貸出制度)を実行した。3月14日から17日に、5大証券の一角だったベア・スターンズが破綻した。この時は300億ドル(3兆円)の政府持参金を付けてJPモルガンに救済合併させて危機を回避した。国債貸出制度の実質は、公的資金の投入である。アメリカの金融危機はやがて頂点に達するだろう。日本はアメリカの影響から離れて独自の生き残りの道を考えなければならない。(了)

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2011年6月24日 07:00
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