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増設か新空港か 福岡空港問題を検証(3)
行政
2008年10月20日 18:18

 「需給逼迫緩和」「利用者利便性」「環境・安全」「まちづくりや地域振興」「事業効率性」の5点からの「評価項目」による比較評価がなされている。

1点目の「需給逼迫緩和」から見てみると、
         【増設案】         
A,発着需要への対応では年間18,1万回が可能(2032年時点での)   
B,年間処理能力では18,3~19,7万回    
C,工事期間は約7年、その他に環境アセスメント、用地買収、埋蔵文化財調査などの期間がさらに必要とされる。
D,将来の拡張性としては、周辺への影響が極めて大きく、現実的には困難としている。

         【新設案】
A,発着需要への対応では年間18,1万回が可能(2032年時点での)   
B,年間処理能力では21,3~22,6万回    
C,工事期間は約9年、建設予定地周辺における現況調査、環境アセスメント、漁業補償、アクセス用地買収などの期間が必要で、増設案よりも長期間を要する。
D,将来の拡張性としては、滑走路配置などの対応が可能。

         【現状のまま】
A,発着需要への対応は不可能   
B,年間処理能力では14,5万回    


この中でいくつかの問題点が指摘できる。1つは、需要予測への疑問である。需要が小さくなっている中で2032年までの中長期な予測が甘いのではないのか、予測データの根拠の信頼性を問う声が出されており、この点は先の総務省からの北九州空港の需要予測に対する問題点の指摘とも重なる。2つは事業費の根拠である。国の説明によれば、事業費は平成18,19年度の単価を基準にしており、急激に高騰している昨今の物価が反映されていないことは確かである。国自らが認めているように事業費はそれほど「精度」高くない。ましてや、関西国際空港のような海上空港となれば「予定」の倍に事業費が膨れあがることは常識的に考えられるであろう。

―利用者利便性と環境・安全面―

         【増設案】
A、アクセス利便性     博多駅から5分、福岡インターから15分   
B、利用時間        15時間(7~22時)            
C、ピーク1時間処理容量  40回                    
D、航空路線・便数の拡充  一定可能、深夜・早朝便は不可             
E,生活環境への影響    拡大の可能性は小さいが、騒音は残る     
F、自然環境への影響    埋蔵文化財の保護対策が必要         
G、安全性の確保      現状と同じ                 

         【新設案】
A、アクセス利便性     博多駅から15~20分、福岡インターから20分
B、利用時間        24時間
C、ピーク1時間処理容量  43回
D、航空路線・便数の拡充  需要に応じた拡充が可能深夜・早朝便の就航可能
                  アクセス利便性によっては他の交通機関との競合路線の減便の懸念
E、生活環境への影響   市街化区域には影響は及ぼさない。環境対策費は不要
F、自然環境への影響   埋め立てによる生物や水質等の環境保全。海浜変形の恐れ。
                 アクセス整備に伴い沿線の自然環境への配慮
G、安全性の確保     飛行ルートが主に海上となり、更なる安全性の向上が図れる


 三苫・新宮ゾーン新設案は、陸地に近い場所が想定されているが、志賀島・奈多ゾーン案と比較すれば事業費は少し安くなるにしても、陸地に近い分、安全性や生活に及ぼす影響が増してくるだろう。玄海国定公園であることから環境保全への影響は過小評価すべきではないだろう。
 また新設により「環境対策費が不要」とされているが、果たしてそうなのか。環境対策費は直近10年間の平均で年間62億円(うち移転保障費約50億円)が現空港に支出されているという。現空港が存続する場合、移転保障費は未来永劫続いていくのかという問題がある。また新空港が出来た場合は、今の空港はどうなるのか。大阪の伊丹空港の例にもあるように、存続運動によって伊丹空港は関西国際空港と併存している。さらにアクセスの問題があるが、アクセスは鉄軌道と道路延伸が言われているが、示されているような時間ではとても空港にはたどり着けないと考えられる。

―まちづくりや地域振興―

         【増設案】
A、まちづくりへの影響
 ・空港の存在により東西方向の道路網や市街地の分断などの問題が残る。
 ・高速道路等の広域的な交通基盤が集積する空港周辺の流通・生産の機能が維持される。
 ・空港周辺では航空機騒音が住宅系の土地利用に今後も支障となる。
 ・拡張用地内の代替地の確保が必要。
 ・福岡都心部などで、高さ制限が継続。
B、福岡・九州にもたらす影響
 ・市民生活の向上や経済活動の活性化に寄与
 ・東アジアとのむすびつきが強まるなど、経済、文化、学術交流が進む。
 ・航空会社間または他の交通機関との競争環境が一定程度整備される。

         【新設案】
A、まちづくりへの影響
 ・新空港周辺では空港を活かしたまちづくり、景観形成、観光戦略立案なども可能。流通・運輸系施設の立地が予想され、計画的なまちづくりが必要。周辺住民との合意形成が必要。
 ・現空港周辺では、騒音影響による土地利用上の制約がなくなる。
 ・地域住民の合意形成を図りながら、現空港跡地及び周辺地域の利活用を進めていく必要がある。
B、福岡・九州にもたらす影響
 ・市民生活の向上や経済活動の活性化が大きく促進。
 ・東アジアとの結びつきが更に強まるなど、経済、文化、学術交流が一層拡大。
 ・航空会社間または他の交通機関との競争環境が整備される。
 ・空港施設や利用時間帯の制約がなくなり、深夜便も含めた航空ネットワークの拡大により貨物輸送の利便性が向上し、生産性の向上や産業立地等も期待され、ビジネスジェット、自家用ジェットなどの幅広い航空利用への対応が可能。


 新設の場合、「市民生活の向上や経済活動の活性化が大きく促進」「東アジアとの結びつきが更に強まるなど、経済、文化、学術交流が一層拡大する」とされているが、それはあくまでも期待感の表明に過ぎないのではなかろうか。市民生活や経済活動が、自動的に活性化するわけではないだろう。空港を戦略的に位置づけて、いかにまちづくりの中に組み込むのか、アジアや地方からの視点の分析や経済情勢についての根拠が乏しいと言わざるを得ない。


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