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特別取材

『戦略論』と『戦術論』
特別取材
2009年1月 7日 09:21

 昨年末、好調裡にNHK大河ドラマ『篤姫』が終わった。
 徳川幕府から明治維新へかけての日本の激動期を描いたドラマであったが、その後の明治政府による富国強兵策で世界列強の一つへと日本は上り詰めていく。
 その間の、日露戦争終結までの時代を描き、勝利までの純粋でひた向きな日本を描いたのが司馬遼太郎著の『坂の上の雲』であり、大方の知識人が皆こぞって愛読した小説だ。
 この『坂の上の雲』がNHKで今秋から2011年まで、足掛け3年にわたり放映される。
 この小説はハードカバーで計6巻にわたる長編小説である。
 この長い長い小説を読みながら果たして『日露戦争』は何年間続いたのか? と考えて調べてみると、僅か1年7ヶ月間であった。
 開戦までに英国での国債発行を頼んで戦費を調達し、過酷な訓練を行ない、兵糧が尽きつつある中で戦況が有利なうちに米国に仲裁を依頼する。見事なまでの戦略が描かれている。
 米国発サブプライムローンに端を発した世界同時不況は昨年後半、日本への影響は比較的軽微だという予想を大きく外れ日本経済も坂道を転げ落ちるどころか真っ逆さまに落ち込んでいった。
 先行き不透明どころか、どうしたらよいか判らないようなキリモミ状態である。
 しかし、そうした中でも体勢を整え直し、戦略と戦術を練らねばならない。
 年末の大掃除の最中に、5年前の『日本経済新聞』の切抜きが出てきたので紹介する。

『日本経済新聞』「あすへの話題」より
 東京大学教授・藤本隆宏氏が同紙に寄稿した『日本三文オペラ』の切抜きが出てきた。
 文面から推察すると2004年の2月某日であろう。そして経営学専攻ではなかろうか?
 以下その文章を紹介する。

 唐突だが今月は日露開戦百年である。
 と言えば、司馬遼太郎の「坂の上の雲」を思い出す。言うまでもなく、アジアの片隅の小国が西洋列強に抗し、日露戦争で薄氷の勝利を得るまでの、長い長い小説である。
 それは卓越した戦略論でもある。戦略とは畢竟、運と縁とに支配された混沌の中で、一筋の意図をたどってぎりぎりの勝利を得んとする試行錯誤だということが、いかなる経営学書より明確に伝わる。
 仮にこうした謙虚な戦略思考を受け入れる精神風土が1905年の日本に有ったなら、その後1945年までの歴史は違ったかも知れない。
 戦略を語る小説として偉大である。
 さて、経営学の二本柱は戦略論と組織論であるから、経営学者としては次に「組織を語る小説」を論じねばならない。
 その到達点の一つは、開高健の「日本三文オペラ」だと私は思っている。やぶれかぶれの饒舌体の魅力もさることながら、組織を主人公とする取材文学として出色である。「大阪の陸軍砲兵工廠跡から屑鉄を盗み出す集団」という非公式組織の生成、発展、消滅の物語だが、そこには、共通目的の発見、分業の自然発生、協業と紛争処理ルールの創発、余剰資源の枯渇、組織の解体、といった、およそ組織論の基本とも言うべきテーマが凝縮されている。
 同じく取材から出発しながらも、我々社会科学者は、現実を解剖して論理のブロックに分解し、その再組立により現実を説明しようとする。これに対し小説家は、それを一塊の小宇宙として丸ごと掴み出し、その全体で普遍的なものを表現する。
 迫力と説得力において敵わないと思う。取材する学者は、取材する小説家に学ぶことが多い。

【 徳島 盛 】

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