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特別取材

過疎の町に24時間営業の巨大不夜城 討ち死に覚悟で天職を全う(上)
特別取材
2009年2月 7日 11:36

 1997年、人口2万4,000人の鹿児島県阿久根市に出店した「AZスーパーセンター」。生活必需品をAからZまですべて揃えるという店名の通り、取扱い品目は約35万点にも及ぶ。圧倒的な品揃えで顧客の支持を広げ、05年には川辺町に出店。この3月には3店舗目となる隼人(はやと)店(霧島市)を出店する。リーマンショックをものともせずに躍進を続ける(株)マキオ代表の牧尾英二氏に語っていただいた。

(株)マキオ(A-Zスーパーセンター) 代表取締役社長 牧尾 英二 氏

所在地:鹿児島県阿久根市赤瀬川2210
設 立:1985年12月
資本金:3億4,400万円
年 商:(08/2)165億円

■すべては「お客様のため」 地域の役に立つ小売に

 ―膨大なアイテム数、24時間営業など、なぜこのような形態の店舗を出店しようと思われたのでしょうか。
 牧尾 ホームセンター時代にはいわゆる経営の勉強をたくさんしました。経営コンサルタントにもお願いしましたし、小売業の研修や視察にも多数出席しました。「人材は人財」として収益のかなりの部分を教育費に充て、当時最先端の在庫管理システムを導入したりもしました。しかし、うまくいかなかった。  私は自ら望んで小売業に進出したわけではありません。自らに言い聞かせる意味でも「小売業は自分の天職」と思い定めました。天職は損得よりも善悪で取り組むものです。お客様の日々のお手伝いとして何ができるか、それは生活必需品をすべて揃えるということだったのです。そうするとどうしても巨大な店舗が必要になります。なかなか話が前に進まないなかで銀行の融資辞退が続出し、その結果、資金調達はベンチャーキャピタルから行ないました。構想から11年の歳月を要し、手形不渡り寸前で出店にこぎつけました。

―業界の常識を覆した成功例として注目されています。
牧尾 確かに、今は注目される企業になりました。前例を否定する取り組みをしてきたのも事実です。ただ、画一的に「過疎化が進む町への大型店の出店により、あるいは24時間営業に取り組んだことで業績を伸ばしている」といった報道をされる。しかし、販売戦略として取り組んだことは何もありません。効率を見ればアイテム数は絞り込んだ方がいい。営業時間にしても、今は深夜に3割を売り上げるようになりましたが、時間帯によっては大赤字です。お客様より従業員のほうが多い。でも1日の中でお客様にとって大事な時間はそれぞれ異なります。大事で無い時間帯に買い物をしていただくには24時間営業しかありません。A-Zはたまたま今生き残っています。しかし、お客様からそっぽを向かれればつぶれてしまうでしょう。

―人生の節目で小売業との縁があったことも、店づくりに影響しているのでしょうか。
牧尾 あるかもしれません。サラリーマン時代に中内さんの講演を聞く機会がありました。「価格革命をする。全国に安い商品を広げる」という考え方に感銘受け、中内さんは今でも尊敬しています。その後、時代が進んで、効率と単価を重視したコンビニ業態が国内で大きな位置を占めるようになりました。大きな収益を上げているのに小売価格は定価のまま、という状況はお客様にとってどうなのか、という疑問を感じていました。
 もうひとつは、関東在住の際、忙しさにかまけて子供たちとゆっくりコミュニケーションをとることができませんでした。その頃にわずかに罪滅ぼしとなったのが、近所の大手スーパーに一緒にでかけることだったのです。欲しいものを買ってあげる。一緒にお子様ランチを食べる。あるいはゲームセンターで遊ぶ、といった些細なことです。ところが突然その店が閉まってしまうことになり、「最後だから」ということで買い物をしました。はじめは何も感じませんでしたが、蛍の光が流れてくると突然なんともいえない寂しさがこみ上げてきました。近所に買い物ができる場所はたくさんありましたが、私にとってのスーパーはそこしかなかったのです。今はスクラップ&ビルドは当たり前ですが、その時痛切に感じたのは、小売店は自分の身勝手で簡単に逃げ出してはいけないということです。
 また、こちらに戻ってきてからも、買い物に行くと都会よりも物価は高く品揃えは少ない。所得は圧倒的に低い。田舎の人は不便な生活を強いられているということを、身を持って知らされました。だから、せめて小売の世界だけでも地域のお役に立ちたい、ということが根底にあります。(つづく)

【鹿島譲二】

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