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大手各社 相次ぐトップ交代の背景
ビジネス最前線
2009年3月23日 14:12

 トヨタ、日立に東芝……。日本を代表する大メーカーのトップ交代が相次いでいる。100年に1度といわれる経済危機の中、各社は逆風にあえぎ巨額赤字を計上する羽目に陥った。一連の社長交代を見ると、新規事業に失敗し、守旧派が盛り返す「保守本流回帰型」がやけに目に付く。
 日立製作所が3月16日に発表したトップ交代人事は、衝撃的だった。庄山悦彦会長(73)が取締役会議長に、古川一夫社長(62)が副会長に退く代わりに、会長兼社長として実権を握ったのは、子会社である日立プラントテクノロジーと日立マクセルの会長を兼務する川村隆氏(69)だったからだ。子会社のトップに退いていたOBが親会社の頂点にのぼりつめたのだから、日本の企業社会の中では異例だろう。

 日立という会社は茨城県の日立市などに企業城下町を形成し、かつて従業員とのその家族数は日本の総人口の約1%である約100万人を数えた。子会社・関連会社を含めた企業集団で日本のGDPの1%を稼ぎ出すとも言われてきた。
 それだけの巨大企業だけに、旧ソ連を思わせるような非常に官僚的な企業風土にある。若い時期に選別され、エリートは特定のコースを歩む。そうした点では、川村氏はもともと保守本流の人である。社長・会長を歴任した三田勝茂、金井務両氏のラインに連なる「東大工学部卒、重電畑出身、日立工場長経験者」だからである。戦後ほぼ一貫して日立の経営幹部はこの「東大工学部卒、重電畑出身、日立工場長経験者」で占められてきた。高度経済成長で電力需要が伸びたため、原子力発電プラントを造る部門が花形職場だったからでもある。

 しかし、電力需要が鈍化し、重電部門の利益率が低下した。半導体やコンピューターなど新規事業分野では迅速な決断力が求められ、納期などがあらかじめ決まった重電部門出身者では対応できない。そもそも、同タイプの人間ばかりが幹部に登用される硬直的な社内人事が大企業病をもたらしもした。
 そこで抜擢されたのが家電などを担当してきた庄山氏だった。庄山氏は保守本流の必須要件の東大工学部卒ではなく東工大卒だった。日立の経営の多角化を進め、プラズマテレビやハードディスクに大型投資をし、体質改善を図ってきたのだが、しょせん「武家の商法」だったのか、これが完全に裏目に出て赤字を垂れ流した。後を継いだ古川氏も、庄山氏が院政をしくために抜擢した面が否めず、迫力不足だった。経営の迷走に拍車がかかり、一時は米国系買収ファンドが日立買収を検討するほどだった。2009年3月期にはこの10年間で4度目となる巨額赤字を計上する羽目に陥ってもいる。
 危機の中、息を吹き返したのが「東大工学部卒、重電畑出身、日立工場長経験者」人脈だった。かつては社長候補と言われたこともあった川村氏が、転出先から返り咲く異例の人事の背景にはこうしたことがある。

 守旧派が盛り返す「保守本流回帰型」人事は、東芝でもうかがえる。HD-DVD事業からの撤退など大胆な経営決断で評判の高かった西田厚聡社長(65)が会長に退く一方、やはり東芝の保守本流部門である重電畑出身の佐々木則夫副社長(59)が社長に就く。東芝では、家電や海外営業畑などを歩んだ西室泰三氏(現東京証券取引所会長)が1996年社長に就いて以来、13年ぶりに重電部門への大政奉還となった。西田氏が旗を振ってきた半導体部門は、世界経済危機によって巨額赤字を垂れ流しているが、重電部門の利益率は比較的安定的だ。
両社の人事を見ると、新規事業分野で失敗し、伝統部門に回帰しようという印象が強い。ともにコンピューターやデジタル家電、半導体など新しい分野に軸足を移したものの、価格競争に巻き込まれて巨額赤字を計上した。一方で、中国やロシア、インドなど新興国の電力需要の高まりとともに、一時は傍流的存在だった重電部門が再び主流に踊り出るようになった。

 渡辺捷昭社長(66)が対米投資の失敗の責任をとり、創業家の豊田章男氏(55)が登板するトヨタ自動車は、心機一転を図る体制刷新の側面もあるものの、同様に「保守本流回帰型」でもある。奥田碩、張富士夫、渡辺の3氏で続いた拡大路線が米国経済の変調によって限界を露呈し、経営戦略を抜本的に見直さなくてはならなくなり、本流中の本流である創業家の登板によって危機をしのごうとしているからである。豊田章男氏は社長就任の内定発表会見では、「お客様第一、現地現物という創業の原点に立ち返る」と再三強調し、トヨタのDNAであるトヨタ生産方式への回帰も盛んに口にしている。
 100年に1度の経済危機の中、各社は拡大路線や新規事業に懲り、原点に回帰する。その守旧への回帰の仕方は、構造改革路線に懲りて公共事業バラマキを歓迎する麻生政権や小沢民主党とも似ている。シリコンバレーから次々に新しいビジネスが生まれる米国と違って、日本は結局、旧来型ビジネスに回帰する。

【神鳥】

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