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干天の慈雨になるか、中東オイルマネー
ビジネス最前線
2009年5月22日 11:37

 将来有望な技術を持ちながらも「100年に一度の経済危機」によって資金繰りに苦しんでいる企業は少なくない。国内の金融機関が貸し渋り、リスクマネーの出し手がいないなか、注目を集めているのが、無尽蔵のマネーを持つ中東である。
 中東の潤沢なオイルマネーを日本の国内向け投資に振り向ける構想がいま、水面下で進んでいる。産油国のアラブ首長国連邦を構成するアブダビの国富ファンド(SWF、ソブリン・ウェルス・ファンド)から資金を引き出し、資金難にあえぐ日本の企業に投資し、「干天の慈雨」とするアイデアだ。
 日本側の窓口となって協議を進めているのは、日本輸出入銀行と海外経済協力基金が統合してできた国際協力銀行だ。もともと輸出入にかかわる融資や途上国への資金支援が主だったが、2008年に国民生活金融公庫、中小企業金融公庫などとともに日本政策金融公庫(日本公庫)に再編され、いまは日本公庫の国際金融部門となっている(名称は国際協力銀行のまま)。政府系金融機関の再編に伴って国際協力銀行の主力業務も従来と変わり、日本にとって重要な海外資源の開発と日本の産業の国際競争力の強化とされた。
 こうした流れのなか、国際協力銀行は、日本公庫の傘下入りする直前の07年暮れ、アブダビのSWFであるムバダラ開発との間で「東アジアにおける石油化学、環境技術、省エネ、ハイテクなどについて意見交換をする」などと提携関係を結ぶ覚書を結んでいる。アブダビ側には、これまで欧州と米国に偏していた投資先を分散させたい意向があるが、中国は投資先として透明性があまり高くない。このため、日本への投資を加速させようと問うと、同覚書中ではアブダビからの対日投資についても国際協力銀行が助言することが盛り込まれた。
 この関係をさらに強固なものにするために、アブダビのオイルマネーによる対日投資ファンドを官民で設立する構想が浮上している。構想によると、国際協力銀行とアブダビのSWFがそれぞれ500億円程度出資し、1,000億円規模の「投資ファンド」を創設。さらに国内のメガバンク、証券会社など民間金融機関からも出資を募り、数千億円規模のファンドに拡充する。
 投資先は、代替エネルギーや環境技術など新技術の芽を有する日本の有望企業が検討されている。ただし、ハイテクや次世代技術など製造業だけでなく、道路やビル建設といったゼネコンでも「排出物を少なく抑える『ゼロエミッション』的な技術を有するケースも対象となりうる」(関係者)とし、幅広い業種に資金を提供できる仕組みにする考えだ。
 メガバンクが赤字に陥り、地方の金融機関も大分、宮崎、南日本など上場地銀87行のうち47行が赤字転落し、有望技術への新規融資はおぼつかない。100年に一度と言われる経済危機のもと、国内の新規産業へのマネーの出し手が激減するなか、新たなリスクマネーの出し手として中東の潤沢なオイルマネーに白羽の矢が立った格好だ。
 アブダビ当局と水面下で交渉している自民党の田村耕太郎参院議員は「大きく成長しそうな将来技術の芽をこの危機でつぶしてはならない。即座にポンと金を出せるのはいまや産油国しかない」と語る。アブダビ側も原油生産が減少する将来を見越して、次世代エネルギーや環境技術などで世界に先行する日本の技術を有望な投資先と考えたようだ。すでにアブダビ側は対日投資の責任者を決め、5月下旬から6月にかけて大規模な視察団を日本へ送る計画という。
 こうした動きを政治の力でバックアップしようと、4月22日には自民党に「日本を資源エネルギー大国にする勉強会」という新しい議員連盟が発足した。先の田村氏を始め、安倍晋三元首相、さらに自民党内で急速に力をつけてきている菅義偉選挙対策副委員長ら約40人が参加。会長には、商工族でエネルギー政策に明るい梶山弘志が就いた。同議員連盟は、レアメタルなど幅広い天然資源の権益を海外に確保することや次世代エネルギーの開発に資金を充当できる投資ファンドの創設を掲げている。
 だが、財務省は渋い顔だ。昨年には外国為替資金特別会計にたまった100兆円もの資金をもとに日本版SWFをつくる構想が自民党内に浮上し、火消しに躍起になった経緯がある。政治が先行する投資ファンド構想に何らかの形で資金拠出をさせられないかと及び腰なのだ。


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