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東京レポート

監査法人がGCを付けた上場企業 09年3月期決算は基準緩和で79社に
東京レポート
2009年8月 3日 17:49

 やはりというべきか。経営の継続性について重大なリスクがあると開示した「危ない会社」が大幅に減った。2009年3月期の決算書に、企業が存続できるかどうか(ゴーイング・コンサーン=継続企業の前提)に関するリスク情報を記載した上場企業(東京証券取引所、大阪証券取引所、ジャスダック証券取引所、名古屋証券取引所)は、79社にとどまった。世界的な大不況で、株式や金融商品などの大幅下落が企業業績に与えるショックを和らげるために、ゴーイング・コンサーンの掲載基準が緩和されたからだ。

<大不況で開示基準緩和>

 ゴーイング・コンサーン(以下GC)は、監査人が監査先の企業が存続するかどうかについての意見を表明する、リスク開示制度。監査人の求めにより、経営者は、自社が1年以内に破たんするリスクが極めて高いと判断したら、破たんリスクとそれへの対応策を決算書に明記しなければならない。
 同制度は、2003年3月期から開示が義務付けられた。投資家にとっては、監査人が認めた「危ない会社」、いわば「イエローカード」をつきつけられた会社という意味合いがある。
 だが、100年に一度の経済危機に直面し、業績が急激に悪化する企業が増えることが予想される事態になり、09年3月期からGCの掲載基準が緩和された。
 これまでは、営業赤字や営業に伴う現金収支でマイナスが続いたり、新たな資金調達が困難な状況の場合には、ただちにGCの注記がなされてきた。
 しかし、企業の業績が悪化し、金融機関が融資先に純資産の維持を義務付けるなどとしている財務制限条項に抵触しても、実際には借入金の即時返済を求められない場合がある。新基準では、企業の業績回復策などに確実性があると監査法人が判断すれば、GCの注記を付ける必要がなくなった。

<緩和は東芝の救済(?)>

 金融庁がGC開示基準の見直しを急いだ背景には、リーマン・ショック後に経済界に流れた「大手メーカー倒産説」との関連が指摘されている。世界的大不況の直撃を受けて倒産する大手メーカーとして、東芝やNEC、IHIの名があがった。
 なかでも、危険水域に達していたのが東芝だ。巨額な赤字を計上、株主資本比率が急落。09年3月期には8.2%と、10%を割り込んだ。株主資本比率の急落で、財務制限条項に抵触する。今後も損失が拡大すれば、債務超過に転落しかねない。
 東芝にGCの注記が付けば、それが引き金となり、東芝が破たん。信用クラッシュを招き、大手メーカーの倒産ラッシュが起きる。そんな深刻な事態を防ぐために、急いでルールを変更。東芝はGCの注記を免れた。

<新興企業が突出>

 09年3月期決算でGCが付いた上場企業は79社。3月期決算企業で、08年10月から12月期に注記がついていたのは132社あった。ルール変更で、GC開示を免れた企業が53社。逆に言えば、GC開示基準を緩和したにもかかわらず、なおGCが付く企業はかなりリスキーな企業ということになる。
 製造業では、生産調整で売上が減少し、大幅な損失を出した企業が目立った。自動車マフラー最大手のフタバ産業(愛知県岡崎市)は、トヨタの減産で巨額な赤字。GCの注記がついた。過年度決算訂正、架空取引を装った不正取引の発覚など、不祥事が相次ぐ。
 富士重工業系の乗用車用部品メーカーのイチタン(群馬県太田市)は、債務超過で上場廃止基準に抵触し、GCの注記がついた。富士重工による増資で切り抜ける計画だ。
 信用収縮の影響が著しい不動産業も少なくない。マンション中堅、コスモスイニシア(旧リクルートコスモス、東京都千代田区)は巨額の債務超過でGCの注記。主要金融機関と筆頭株主の投資ファンドに支援を要請しているが、上場廃止の公算大だ。
 破たんしたホテルを買収してきたカラカミ観光(北海道虻田郡)は、シンジケートローン財務制限条項に抵触しGCの注記。ワンマン経営を貫いてきた創業者の唐神茂夫氏が、昨年12月に亡くなったのは痛手だ。
 とりわけ東証マザーズ、大証ヘラクレス、名証セントレックスの新興企業市場の企業が多数を占めるのが大きな特徴だ。マザーズが12社、ヘラクレスが5社、セントレックスが3社の合計20社。新興市場に上場している3月決算企業の12%を占める。  東証、大証、名証、ジャスダックの4市場でGCがついた企業の割合は2%強。新興企業は、その6倍の発生率となる。新興企業の底の浅さが顕れた格好だ。

【日下 淳】


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