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官僚との戦いは、民主党の不戦勝です。脱藩官僚 縦横無尽(57)

[脱藩官僚 縦横無尽]

■ これから4年は、衆議院選挙はありません。
 マスコミの報道では、脱官僚依存政治を掲げた鳩山民主党が、どのように官僚を押さえる手を打ち、官僚はどう戦うか?という報道がたくさん出ていますが、私はこの問題はだいたいケリがついていると思っています。
 どの時点で大きな戦いは終わったかというと、8月30日に民主党が308議席を獲得した時点です。民主党の不戦勝です。
 ここまで大勝ちすると、総選挙前に言われていた来年の参議院選挙で衆議院選挙も行なわれるダブル選挙になるとか、政界再編だということが全くなくなりました。これから4年続き、しかも絶対多数の民主党に正面から楯突く骨のある官僚は、ほとんどいないのです。

■ 4年後の衆議院選挙は比例代表が80減るので、益々厳しくなります。
 今回の総選挙でも4年の任期をほぼ満了する形で行われたように、政治家の本音として勝つか負けるかしかない小選挙区制のもとでの選挙は、出来るだけしたくありません。
 その上、今回の2009年民主党のマニフェストには、比例代表制を大幅に減らすことを公約に掲げています。今の制度では、自民党か民主党の候補になれば、75%の人が小選挙区か比例代表で当選するのですが、この大事な救命装置180名分が100名分に減らされてしまうのです。
 簡単な計算ですが、300の小選挙区に民主と自民の候補者が合計600名。小選挙区の当選者は300名で、比例代表の当選者は、公明や社民の当選者を除くとだいたい150名。600名の候補者のうち、合計450名が当選するのです。75%の当選率です。本当にインチキな制度ですね。
 ところが、これが4年後には大幅に減らされるのです。そうなると、当選率は66%に低下し、ますます選挙はしたくなくなるでしょう。比例代表制で多くの当選者を見込む公明党や社民党、共産党は、もっと選挙はしたくないでしょう。
 だから、衆議院議員の選挙は、よほどのことがない限り4年後まで選挙はないのです。また、圧倒的多数となった民主党は、これから権力の絶対的な旨みを経験します。そうなると分裂、政界再編ということもまずないでしょう。

■ キャリアの幹部ポストも長期になる可能性
 民主党は、マニフェストに掲げた困難な政策を実現しないと、次の選挙では今回の自民党のように大敗する可能性があります。そうなると実行力のある大臣が基本的に4年間は交代しないという当たり前の体制となると思います。
 では、困難な政策を実行する責任を負う大臣はどうするか。企業の経営であれば、当然のやり方ですが、政策の実施を担う次官や局長も優秀な人を長期に使うことになる可能性が高いと思います。幹部は長くそのポストにとどまることになるのです。
 そうなると、キャリア官僚は自分の出世を考え始めます。民主党の政策実行に協力してポストを得たいと思うようになるのです。特に、これまでおかしな口利きに抵抗して自民党の不興を買っていた人であれば、なおさら民主党の公約実行のために働く方向に切り替わることになると私は予想しています。

■ 定年まで安心して勤められる人事に早く変えること
 地方自治体では、例えば同期生の一人が副市長や総務部長になったら、他の同期生は早期退職するなどという慣例はありません。定年までいることができます。しかし、キャリア官僚は、ポストが上になるごとに、どんどん早期退職して天下りをしていくシステムになっていました。私が農林省に入った昭和50年頃は、50歳前から早期退職が始まっていました。
 ところが、今は、退職年齢はどんどん高齢化しています。天下りポストが枯渇しているし、うかつに斡旋もできないのです。農林省の人事担当課は、今は天下りにほとんど絡んでいないようです。ともかく批判が強いので、おとなしくしているといったところでしょうか。
 ところがOBは違います。先日、汚染米の件で引責辞任した元事務次官が、大日本水産会に「かけこみ天下り」したとの報道がなされていましたが、退職したOB同士でポストのやり取りをしているようです。
 現役の人たちも「OBは自分たちだけ良い目にあって、現役のことを少しも考えてくれない」とぼやいていました。私も現役の農林官僚だったら、「どうして民主党政権誕生前に引責辞任した次官を天下りさせるのか!」と怒るでしょう。自分たちは関与していませんと言っても誰も信じてはくれないのです。
現役官僚の多くは、すでに天下りは出来ないだろうなと半ば覚悟していますが、だとすると定年まで、年金をもらえるまで働けるよう、多少安心できるプランを民主党が提示しないと、一生懸命に動く人はポストを獲得できたごくわずかの人間だけとなります。それも、民主党の政策実現にとっては困ったことだと思います。
 現役のキャリア官僚に対して、定年までは勤めることが出来る制度にすることを早く宣言してあげれば、そして多少給料を下げても定年延長をしてあげれば、容赦なく、OBが天下っている団体を切っていくと思います。
 新しい大臣も、組織の運営に長け、現役とOBの分断を図るくらいの、したたかな人が就任するとよいのですが。農林水産省は短い期間に何人も大臣がコロコロと替わりましたので、今度は、政策も良く知っていて組織運営にも長けた立派な方が大臣になってくれることを、皆が願っているはずです。


追伸 私は、IT関係の政策も得意としていますが、下記の日経BPのサイトに、民主党政権が地方自治体のIT政策に与える影響について投稿しています。ご関心のある方はご覧下さいね。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090901/336299/

木下 敏之
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□木下敏之行政経営研究所代表 □前佐賀市長(1999.3~2005.9)
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info@kinoshita-toshiyuki.net (ご感想、情報など気軽にメールをください。)
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■著書
 [ なぜ、改革は必ず失敗するのか-自治体の「経営」を診断する ]
データ・マックスにても取り扱い中

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