<食事が喉に通らない、眠れない>
「確かに、鳥飼ハウジングさんのことを考えたこともあります。しかし、それよりも何よりも、新井が逮捕されたショックで食欲はなくなりますし、眠れない状態が続きました。人様に会うことにも臆病になりましたが、『これではいけない』と自分に鞭を打って、お客様に事後説明・謝罪にまわった次第です」
新井社長は、当時ショックを受けた心理状態を、このように説明してくれた。誰でも検察庁に逮捕されれば、常軌を逸するであろう。
取材を通じて、事実経過が判明してきた。まず、国税が最初に査察に来たのは昨年2008年9月のことであった。経理関係者が事情聴取されたが、それで表向きの調査は終わった様子だったのでひと安心していた。ところが、事態が急転したのは今年8月の終わりからだ。周囲の人たちが呼び出しを受けはじめたのである。「OBの○○さんも呼び出しを受けたそうだ」と、会社に情報が飛び込んでくる。9月の終わりには「犠牲者(逮捕者)が出るな…」という緊迫した雰囲気が漂い始めた。顧問弁護士にも相談し、法対も練ったようだ。
国税・検察庁に、参考人として関係者・OBも呼び出された。参考人になった方々を取材してみた。国税・検察それぞれ1回、国税1回・検察2回と、重要度に応じて呼び出されたようだ。彼らの話では、検察は最初から新井オーナーに狙いを絞っていたようだ。「新井社長は営業本部長、新井オーナーが実際の経営責任者=社長と認識していた」とみられる。この組織骨格の特異さ(代表取締役でない新井康夫氏が実権を握っていた体制)が、脱税・逮捕を生じたといえる(この解説は後記する)。
参考人の一人が、「E社においては、以前から税金トラブルのリスクを感じていた」と証言してくれた。新井社長に「国税との和解の道はなかったのですか?」と尋ねた。「いやー、私たちは税理士さんにお任せしていました。力丸先生は国税のOBで、03年ごろから顧問になって頂きました。税務署に強いという触れ込みでしたので安心していたのです」という返答があった。ここで、深い反省の弁を得る。
「私は全く無知でした。経営者たるもの、すべてを専門家に託すのではなく、知恵を借りる程度で、あとはこちらの判断力が必要でした」と。
<質問事項に回答しない、「不誠実」な税理士>
E社の実質オーナー・新井康夫氏は起訴され、拘留されたが、力丸税理士ほか3名は不起訴で釈放された。事務所にたびたび取材し、コメントを求めたが、「連絡つかず」の理由で断られた。そこで、下記のような質問状をFAXした。
「E社側では、力丸先生の『大丈夫』という言葉を信じていましたので、今回の逮捕事件になったとの見解ですが、異論はありませんか」
これには何の回答もなかった。
筆者としても、E 社側の「すべて力丸先生の判断に任せていた」という言い分を信用したくなかったのだが、これではE社側に軍配をあげたくなる。ただ、力丸氏側にも負い目があることは納得できる。自分が先に釈放された事実だ。「力丸先生は検察側と手打ちをした」と、E 社側から憶測を持たれていることである。
E社の顧問弁護士の弁。「税理士が起訴されるわけがない。金を貰っているわけでもないからだ」と。検察側による力丸氏逮捕の狙いは、裏付けを決定的にすることである。非情なものだ。
(つづく)
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