2009年における中洲の厳しい現状を推し量る上で、指標となるデータを得るべく中洲無料案内所「MAN-ZOKUステーション」を訪れた。同案内所は、中洲に数ある案内所の中でも圧倒的な集客数を誇っており、店内には、中洲のキャバクラ、クラブ、風俗店の情報が大量に集積されている。県内外を問わず訪れる人は多く、男の遊びに限定すれば、「中洲の玄関」的役割を果たしていると言ってもよい。

　予想していた通りの結果だった。同案内所における2009年の来場者数は、訪れた12月21日の時点で約33万人。年末までに約34万人となる見込みだ。これは同案内所がオープンした2002年以来、"過去最低"の数字である。来場者数が約37.5万人であった前年からは９％ほどのマイナスだ。
月別では、今年の２月までは前年とほぼ同数の来場者数だが、３月以降落ち込み始めている。曜日別で見ると、金曜日の来場者数が前年に比べ激減している。これは土曜日に仕事をする人が増えたことが原因だと思われる。不況に伴う週休２日制の崩壊。「花の金曜日」の風潮は、中洲から消えつつある。

　減少する来場者数とは逆に、店舗へ来場者を紹介した件数は増加している。前年が約９万件であったのに対し、2009年は約10万件。「当店にしかない割引特典を積極的に利用するお客様が増えました。少しでも安く遊びたいという傾向が強まっています」と、同案内所店長は説明する。割引特典を利用するには、同案内所の紹介を受ける必要があるからだ。
　また、同店長によると、来場者の平均予算が前年に比べ5,000円ほどダウンしたという。業種別予算で見ると、ラウンジ（キャバクラ）で5,000円以下、接待の場合でも１万円が限界。かつて予算平均３万円前後だったソープランドでも、１万5,000円以下の格安料金で遊べる店が好まれる傾向らしい。

　ポケットマネーの減少に対し、値引き競争も激化しているようだ。同案内所の日替わり割引コーナーには、割引情報を書いた紙が所狭しと貼り出されている。店舗側は、回転率重視でギリギリの料金設定を行い、客を獲得しようとしているのだ。それでも客が入らず閉店する店舗は多い。年を越せず、伝統ある屋号を残すため、他の経営者に買収を願い出た老舗風俗店もある。

　客層にも変化が起きている。国内観光客の数が大幅に減少。特に社員旅行で訪れる客数は激減した。その一方で、同案内所に訪れる外国人観光客は増えているという。主に中国や韓国からの観光客だが、その目当ては風俗店。数年前までは、外国人ＮＧの店がほとんどだったが、最近になって受け入れる店が増加した。羽振りの良い外国人を前に、鎖国していた風俗店も開国せざるを得ない状況なのだ。

　数字を通して改めて知った中洲の厳しい現状。景気回復の見通しが立たない今、年が明けてもその先行きは暗い。そして、中洲風俗店の開国策。マカオやソウルで日本人が豪遊していたように、中洲では中国人や韓国人が豪遊する。そんな逆転現象が近い将来起こるのかもしれない。

（つづく）

長丘 萬月（ながおか まんげつ）
　1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。

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