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鳩山内閣のイエメンODA 7億円追加 拉致事件解決金の仕分け(下)
深層WATCH
2009年12月30日 08:00

<不可解な追加ODA 誘拐事件が関与か>
 ODAは、先進国が途上国に有償、無償の資金や技術を提供するもの。よくいえば先進国の善意だが、これらを提供することにより、途上国への影響力を確保する外交手段の一つ。日本は1990年代後半は1兆円超をバラ撒く世界一の援助大国だったが、その後は減少して今年度の当初予算は6,700億円まで減っている。それに補正分約500億円がついたものの、民主党政権はこれも削れるとばかり、先の事業仕分けでもターゲットの一つにして84億円削った。
 日本は資金提供しても相手国にシバリをかけ、物品購入も事業受注も日本企業が落札するように仕向けたり、未消化分は外務省口座に戻るなど、ODA利権はかねてより問題視されてきた。いわば伏魔殿のようなもので、それらが原資となり官房機密費に還流する仕組み。民主党がそこにメスを入れるのは当然であり、政権交代の意味があるというもの。
 それだけに、今回のイエメンへの追加ODAは不可解だ。同国にはすでに、今年度3件合わせて約16億円の無償資金協力が約束済みである。それも近年最高額だ。同国へのODAは03年の15億円以降、昨年度まで4.7億円、2.7億円、11.6億円、9.8億円、11.4億円で推移。そして今年度の16億円である。財源に苦しむ鳩山政権が、それに7億円も追加するのはどういうことか。
 理由は先の邦人誘拐事件しか考えられない。
 拉致されたのは、日本の建築設計会社社員。拉致した反政府武装勢力の目的は、政府に拘束されている親族の解放。昨年5月、邦人女性観光客が拉致されたのと同様のパターンである。女性観光客は、武装勢力と政府の交渉が早々と成立して、その日のうちに解放された。今回も早期解放を予測する楽観報道が目立ったが、気になったのは被害者の立場と事件が起きたタイミングだ。
 被害者はODA事業を実際に遂行する外務省所管の独立邦人・国際協力機構(JICA)の請負企業社員で、いわゆる民間人だ。とはいえ、日本の援助による学校建設の現場管理をしていたので、武装勢力が「日本政府の一員」として観光客より人質としての価値をより高く位置付ける可能性がある。さらに、以前に本誌11月30日号掲載の『小沢発言は日本を危機にさらす』で指摘したが、小沢氏が不用意にキリスト教、イスラム教を批判し、それが世界に打電された直後である。武装勢力自身がそれを知っていたか、あるいは連携する勢力が彼らにそれを吹き込み、「日本政府は反イスラム」と交渉のハードルをさらに高くする口実にする可能性もある。
 交渉経過を注視していると案の定、難航して解放まで1週間強を要した。

<政治色の強い開放交渉 最終決着は「カネ」>
 邦人拉致、誘拐は90年代まで身代金目的に大手企業社員が狙われたが、9・11後のアフガン、イラク戦争以降は、アルカーイダやタリバンの影響を受けるイスラム過激派による、相手国家の姿勢を問う犯行が目立っている。今回の武装勢力も「アラビア半島のアルカーイダ」との繋がりがあり、解放要求する親族もアルカーイダ要員とされているので、イエメン当局も簡単に釈放には応じられない。解放交渉が、政治色の強いものになるのも当然である。
 とはいえ、かつて「自衛隊は撤退しろ」と要求して、NGO活動中の日本人女性を拘束したイラクの武装勢力、あるいはキルギスでJICA職員らを拉致したイスラム原理主義の影響を受けた武装勢力など、政治色があっても最終決着にはカネが動いている。外務省や各種報道によれば、今回の交渉は武装勢力との間に仲介役の部族長グループ、政府側窓口が内務省という図式。日本は「犯人側と部族長らとどんなやりとり、合意があったかの詳細は把握できません」(中東アフリカ局中東2課)というのも当然だろう。
 今回の追加ODAでもっとも奇異なのが、サヌア大学への8,900万円。広報文化交流部が扱う一般文化無償は、04年以降は中東全体でも途絶えていたもの。以前から要請があったとはいえ、「今回のは単発です」(文化交流課)というのも妙。太陽光発電設備がイエメン政府への感謝、こちらが身代金と仲介料分なら分かりやすいが…。
 「補正予算は麻生内閣時代に決まったものですが、鳩山内閣の意向で執行停止になったものもあり、政権交代が反映されているのは確かです」(国際協力局政策課)となれば、イエメンに異様な肩入れを迫られた核心は何だったのか。
 東アジアしか頭になさそうな「小鳩政権」には、ODAの在り方とともに、外交を地球規模の視野から捉えてもらわなければ納税者が困る。

(了)


恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。


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