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企業、人 再生シリーズ

黒木透・再生への道(26)
企業、人 再生シリーズ
2010年3月 3日 08:00

<管理の城、平尾支店開設>

 管理事業を開始したい。そのためには新たな人材が必要だった。まずは事業を任せられる幹部を見つけなくてはならない。そんな折、たまたま、ある男性と知り合った。聞くとその男性の妻は宅建の免許を持っていて、不動産関係で働いているという。
「今度、奥様も交えて食事でもいかがでしょうか」
 人材が欲しかった黒木は、夫妻を食事に誘った。よさそうな人だったら、新事業に誘ってみよう。ピンとこなかったら他の人を探そう。とにかく会うことだ。

 食事会で黒木は度肝を抜かれた。最初の乾杯。女性はスッとジョッキを空ける。続けて談笑をしながら2杯目。こともなげに飲み干す。3杯、4杯。顔色ひとつ変わらない。結局、ビールを7杯も、語調ひとつ乱さずに飲み干した。

 ただものではないと黒木は思ったという。飲みっぷりのよさもさることながら、立ち居振る舞いに乱れがない。初めての食事会にもかかわらず、飾らず気取らず。肝も据わっている。この人なら間違いない。黒木は管理事業を開始したいこと、あなたにこの事業のリーダーシップをとってもらいたいということを打ち明けた。女性は突然の展開に驚きながらも、承諾した。
「今の会社の引継ぎがあるから3カ月待っていただけないでしょうか」

 人は決まった。いよいよ新事業の立ち上げである。黒木は約束の3カ月後までの期間を使って、管理部門立ち上げのための準備を開始した。管理部門とは単に管理のみをするのではなく、オーナーとの接点を持つという重要な意味がある。オーナーが来やすい場所にあったほうがよい。今の本社ビルは住宅地の中にあり、説明が難しい上に、駐車スペースなどがなかった。新たに場所をつくったほうがよい。黒木は平尾・山荘通りの角地に平尾支店を開くことにした。オーナーが来てくれる場所なら、きれいな店の方がよい。内装にも凝った。当然、出費にはなるが、これは先行き投資である。ここでけちけちしてはいけない。

 看板も掲げた。大通り沿いに目立つ看板。わかりよい、馴染みやすい店名がいいと黒木は思った。今年は創業からちょうど10周年。10、TEN YEARS。おしゃれな感じがしない。フランス語では10をどういうのだろう。フランス語では10をDIX(ディックス)というらしい。DIX。黒木の心にしっくりと馴染んだ。かくして平成7年、件(くだん)の女性を店長として迎え、管理スタッフ1名、事務員1名の3名で管理部門の城、平尾支店がスタートした。看板にはDIX KUROKIの文字がさん然と輝いていた。

(つづく)

【柳 茂嘉】


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