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歴史の虚像と実像

龍馬をめぐる歴史ドラマの幻想とリアリティ~歴史の虚像と実像
歴史の虚像と実像
2010年9月17日 08:00
中島 淳一(画家・劇団エーテル主宰) 

 NHKの大河ドラマ「龍馬伝」が空前の大ヒットを飛ばしている。希代の名優、香川照之演じる岩崎弥太郎の語りで始まる切り口は斬新奇抜。土佐の地下浪人の家に生まれた一介の野人岩崎弥太郎が、近代日本の新興財閥「三菱財閥」の基盤をつくるまでの波瀾万丈の人生の途上で、龍馬とからみあい幕末から明治へと続く歴史の糸を紡いでゆくという展開だ。
 二人は幼なじみという設定だが、無論これはエンターテイメントのための創作である。たしかに弥太郎が龍馬よりも一つ年上でほぼ同じ年だが、生まれたところも弥太郎は安芸郡井ノ口村。龍馬は高知城下である。二人は幼なじみどころか、まったく出会うことはなかったのである。
 史実上、二人が接触することになるのは、1867年3月、弥太郎が土佐商会の立て直し役として長崎に赴任した時からである。土佐商会は龍馬の海援隊の隊士の給料の支払いや軍用資金の調達を担っていたので、必然的に密接な関係が生まれたのだ。『岩崎弥太郎日記』にも酒を酌み交わしながら意見交換をしたという記述がある。
 しかも、4月にはいろは丸沈没事件が起こり、紀州藩との交渉でも結束する。さらに7月に起きた英国人水夫刺殺(イカルス号事件)の嫌疑が海援隊にかかったため、龍馬も土佐商会も事態収拾に忙殺される。艱難辛苦を共にすることで、龍馬と弥太郎のつながりは嫌でも応でも深まっていったに違いない。
 しかし、10月の大政奉還のわずか1カ月後、11月15日、龍馬は近江屋で刺客の刃に倒れる。龍馬と弥太郎の人間関係は事実上半年にも満たなかったことになる。
 歴史上の真実は、虚実の皮膜にあるとはいえ、脚色されたドラマと史実には、かくも開きがあるのだ。それを知った上で存分に楽しむのが成熟した歴史ファンの鑑賞の仕方というものであろう。

<プロフィール>
中島 淳一(なかしま・じゅんいち)氏中島 淳一(なかしま・じゅんいち)氏
1952年、佐賀県唐津市出身。75~76年、米国ベイラー大学留学中に、英詩を書き、絵を書き始める。ホアン・ミロ国際コンクール、ル・サロン展などに入選。スペイン美術賞展、優秀賞。日仏現代美術展(82、83年)、クリティック賞、ビブリオテック・デ・ザール賞。ARTEC・カンヌ、欧日芸術振興賞、アートブランドエクイテイ大賞。フィレンツェ美の奇蹟展、リッカルド・アマディ芸術文化大賞など受賞多数。詩集「愁夢」、「ガラスの海」、英詩集「ALPHA and OMEGA」、小説「木曜日の静かな接吻」「卑弥呼」、エッセイ集「夢は本当の自分に出会う日の未来の記憶である」がある。86年より脚本・演出・主演の一人演劇を上演。企業をはじめ中・高・大学校での各種講演でも活躍している。福岡市在住。


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