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日産「ゴーン神話」の終焉 最後のコストカットは妻?(下)
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2010年9月 2日 08:00

<夫人の事業失敗>

 ところがそれはあくまでも表面でしかなく、飲食店経営者あるいは事業家としては、「?」マークがつく事態が進行していた。「ケチのつき始めは1号店地下2階の共有スペースを『マイ・レバノン』が酒類倉庫として占有。管理組合とモメたことでしょう」(当時の同店関係者)。飲食店ビルなどではよくある話。とくに店が繁盛していたら日常業務のなかで自然にそうなったのだろうが、ルールはルールである。オーナー自身が指示したとは思えないが、そこは従業員教育の問題だ。
 「その従業員ですが、マネージャー(店長)以下、コック、ウェイター、ウェイトレスなど、ほとんどが中東系ないしフィリピンなど多国籍。それは良いとしても、ほとんど日本語ができないから、英語のできる日本人女性などが手伝っていました」(当時を知る同店関係者)。
 当時はエスニックブーム。多国籍あるいは無国籍的雰囲気がウケた可能性もあるが、舞台裏はそんなナマやさしいものではなかったようだ。
 「リタさんも日本へ来たときは1~2度は顔を出されていましたが、場所が住宅街だし、従業員も外国人で店のオープン時間もバラバラ。開店当初こそ1号店の知名度でお客さんもそこそこのようでしたが、だんだん暇になってきた様子でした」と2号店近所の住民が言うように、夫人の事業の綻びも07年頃には傍目にもハッキリしていた。
 ゴーン家周辺関係者によれば、06~07年頃のリタさんの生活パターンはパリを拠点に、月1度来日して1号店、2号店を回って報告を受ける。パリと東京の合間には母国レバノンにも帰るという生活。要は人まかせ経営である。
 「従業員が多国籍だけに、1号店を任せた店長自身が売上から現金を抜いたり、オーバーステイのスタッフがいたり、内部の統制が取れていなかった。そうなったのは、外国人が安く使えるというのでまともな人材を集めなかったからでしょう」(当時の1号店関係者)。
 オープン当初は飲食店経営の素人であるリタさんは、プロの日本人飲食店経営者と共同経営でスタートしているが、共同経営者は早々と手を引いている。それはリタさんも自伝で認めているが、リタさんの我の強さに共同経営者が退いた印象だ。インテリアから食器調達まで自分の趣味はいいとして、見えるのはコストカット。材料を安く仕入れ、自分で内装工事もやる。「それらの移動手段は日産お抱えです」(先の1号店関係者)。
 決定的なのは、06~07年にいたイラン人スタッフに「給料未払い」で裁判を起こされたこと。当然ながら「日産の有能弁護士事務所が出動して治めたはずです」(日産関係者)というが、これでは公私混同もいいところ。そんなバタバタの状況にありながら、08年には何を思ったか港区六本木に3号店をオープン。「平日夜の7~8時なのにガランとした店内には、怪しげなアラブ人スタッフだけ。入る気も失せます」(近隣の会社OL)。この年をもって夫人の事業はすべて終わった。
 以来、リタさんの消息は日本から消えた。ゴーン氏の立場からすれば、夫人の事業には怒り心頭ではないか。「ゴーンの威光」を利用したのは明らかだからである。しかし、それも身から出た錆である。
 ゴーン氏の高額報酬が妥当か否か。論じるには個人的事情も考慮すべきである。従業員平均給与とトップとの格差142倍も日産はトップ(『エコノミスト』7月20日号ほか)。ゴーン家に近い筋は、「レバノン内戦も経験したしぶといリタさんとゴーン氏の離婚協議は、相当難航しそう」と見るが、夫婦の確執が社内に持ち込まれるようなことになれば、社員たちは浮かばれない。

(了)

恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。


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