シリウスはおおいぬ座のα（アルファ）星の固有名です。この星とベテルギウス、プロキオンで「冬の大三角」を形成しています。全天でもっとも明るい恒星、シリウスという名前の由来は、光り輝くものというギリシア語にあると思われます。

　中国の都市において特定の小中学校（一般に優良校のことを指します）の生徒募集範囲以内のマンションとアパートのことを「学区房」と呼びます。都市部の小中学校入学は、居住地域ごとに指定された近くの学校に入ることに定められています。従って、特定の優良校に入るのに、指定された地域内の物件を買って、子供の戸籍を移さなければいけないことになります。この「学区房」の存在こそ、不動産業界が厳しく取締りをされ、不況に落ち込んでいる今年のなかで、成約件数と価格共において、「全天でもっとも明るい恒星――シリウス」のように、光り輝くものになり脚光を浴びています。

＜「学区房」の繁盛ぶり＞

　（１）近隣の物件より倍の値段になります。上海市内中心部にある静安区教育学院付属小学校に対応するマンションは、築20年以上の中古にもかかわらず、46,000人民元／ｍ²（一人民元＝13円で計算すると約59万8,000円）にまで達します。しかし、その小学校の生徒募集範囲外のすぐ近くにある同様の物件は、半額で済むことになります。

　（２）道路の両側に雲泥の差があります。丁さんのアパートは上海市地下鉄２号線「世紀大道」駅の付近の住宅団地で、面積は30ｍ²、売却価格が120万人民元です。一方、道路向こうの同じ面積、同じ間取りの物件が80万人民元しか売れません。なぜなら、丁さんのアパートがちょうど市内の名門学校「建平中学校」に所属する入学対象物件だからです。

　（３）年商で上海不動産仲介業トップスリーの一社である「徳佑不動産」のデータによると、売買が冷え込んでいた今年７月でも、各種類の「学区房」の取引が活発でした。需要があまりにも盛んで、供給が追いつかない状態にもなりました。成約件数の下降幅が市場平均値より小さく、場合によっては、交通の利便性が高い場所で、去年と比べて、増加したケースさえありました。

　（４）学校名に命名される仲介業者の店舗名。「学区房」の売れ行きがよくて、その幸運にあやかりたい気持ちで、仲介店舗の店長さんは周囲の有名な学校の名前を使って自店の店名にします。手元の物件に「学区房」さえあれば、店舗のスタッフが外に出て、営業しなくても良いのです。お客さんが次々に入ってきて、値段交渉もしないで、素早く売買が成立します。

（つづく）

【劉　剛（りゅう　ごう）氏　略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年３月より福岡に常駐。趣味は読書。

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