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危うい観光特区構想 中国人客誘致を図る九州と北海道(下)
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2010年10月28日 08:00

<真の狙いは北海道か>

 北海道に中国人観光客が急増したきっかけの1つに、08年の正月映画として公開されて大ヒットした映画の影響があるのも事実。『誠実なる婚活』と日本語訳されたラブコメディだが、舞台になったのが日本、それも釧路や知床、阿寒湖などの道東だった。結果として中国における北海道人気が高まり、今や全道の観光地で中国人の姿が見られる。そんな急増する観光客と軌を一にするのが、NET-IBニュース『外資の土地買収に潜むもの』で既報の中国資本による北海道の森林買いだ。
 8月時点で判明していたのは中国3件、ほかは豪州など4カ国各1件だった。だが、各自治体情報によれば、中国資本による買収は現時点まで倍以上。とくに08年から今年にかけての買収はほとんど中国だ。買ったのはニセコアンヌプリを中心とする後志(しりべし)地方のリゾート地周辺が多いところから、中国人観光客を見込んだリゾート開発狙いと見えなくもない。しかし、実際にリゾート開発しているのは1社。地元を困惑させているのは、リゾート開発には不向きなうえに買収目的も「資産保有」としているところが大半だからだ。
 道庁も自治体も買収したのが個人なら国籍、法人なら所在地で国を分けているが、「中国」のほとんどは香港にある法人。外資の不動産買収に詳しいブローカーが「中国の場合はほとんどが太子党(中国共産党幹部子弟)でしょう」と言うように、北海道の不動産買いが彼ら太子党や中国企業の資産隠し、税金逃れに利用されている可能性があるのはたしか。
 「賄賂天国の中国で私腹を肥やした太子党や国営企業は、まず香港にカネを隠す。それをさらに膨らませるための投資や資産移転に香港の企業を使ったり、ペーパーカンパニーを先兵にする仕組みです」(中国の政経事情に精通する元商社マン)。
 とはいえ、水源地はもとより自衛隊基地が望める山林、原野が中国人、中国企業の手にわたる北海道の現状は異様だ。中国が投資や資産隠し以上の狙いを持って、戦略的に北海道進出を図っている可能性も視野に入れるべきだろう。江沢民政権下でムキ出しになった中国共産党の本質を知るほどに、尖閣諸島が最初のターゲットになるのは明白だった。しかし、そこだけに目を奪われていると、またまた中国の術中だ。今、全国で定住中国人が増え、あちこちで軋轢を生んでいるように、日本は内部から侵蝕されつつある。
 北海道観光振興機構は、「『観光客』ならカネを落として帰っていく善意の人ばかり」と、本気で考えているのだろうか。ノービザで入国したうえ、「車での移動もOK」とあれば、「観光」名目で来日する中国人が、勝手気ままに振る舞える環境を整えてやることに等しい。特区としての北海道が、治外法権化しかねない。
 「中国人、中国資本の不動産取得はもとより、観光客の急増と特区構想。北海道をターゲットにすべてが連動している印象があります」と言うのは、外資の森林買収問題を追っている小野寺秀道議会議員。それで言えば、前述の中国の大ヒット映画が10月15日、『狙った恋の落とし方』という意味深なタイトルで日本でもDVD発売された。
 ハワイを境界に太平洋を米国と二分する戦略を描く中国にとって、日本は「我が海に浮かぶ島」。尖閣は派手な外交最前線として揉みあいつつ、中国の狙いはまず北海道から落とすことにあるのかもしれない。

(了)

恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。


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