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上海最先端レポート

アメリカの悲願=人民元切り上げ(上)~日本人が知らない中国事情(75)
上海最先端レポート
2010年11月11日 08:00
劉 剛

 1980年代初頭、アメリカの失業率が2桁に上った時、ヒット映画「赤い夜明け」が上映されました。アメリカの仮想敵国であったソ連による侵略をテーマにした物語で、当時のアメリカ人の経済的不安感が巧みに描かれました。
 20年以上が経った今、アメリカは再び2桁の失業率に見舞われており、景気低迷による不安の高まりが全国に蔓延しています。時流に応えるように、「赤い夜明け」がリメイクされました。しかし、アメリカを侵略するのはソ連ではなく中国。映画の初めは、中国軍がデトロイト(Detroit)を占領したという設定になっています。

 金融危機のあおりで苦労しているアメリカ人を政府や政治家が懸命に誘導した結果、人民元の切り上げに皆、「熱い切実な思い」を寄せているそうです。アメリカの経済振興、雇用情勢の改善などが人民元の切り上げに密接に結びついているだけではなく、鍵になるかもしれないというのです。人民元が低く設定されているからこそ、今日の不況をアメリカや欧州にもたらしているとの世論作りがアメリカ全国だけでなく世界規模で見事に成功しているようです。

<人民元の切り上げによる中国内への影響>

(1)民間貿易会社が閉鎖
 李さんは服装輸出の会社を営んでいましたが事業停止しました。「アメリカが一生懸命に紙幣を造ったため原材料が急上昇している。コストの増加が止まらない一方で、海外の取引先が値上げを許してくれない。人民元の切り上げが止まったら事業を再開する」と、李さんは為替変動を注目しながら、考えを述べました。

(2)国営組織が国内市場に転換
 「服飾の海外輸出ビジネスでは、5%の利益しかもらえません。人民元がさらに上昇すれば、もっと厳しくなります。したがって、私たちは漸次、目を国内市場に向けています」と、河南省の服装業協会・会長は展望を述べました。

<二人のアメリカ人の物語>
 人民元の切り上げが、アメリカにとってどんな素晴らしいことか、今中国内で「二人のアメリカ人の物語」が大人気です。

人民元 物語の背景は今年6月。その頃、人民元と米ドルのレートは1ドル=6.8人民元でした。二人のアメリカ人がそれぞれ10万米ドルを持って中国を 旅行に行きます。二人が到着後、10万米ドルを68万人民元に両替します。
 ひとりは中国各地を回って、18万人民元をつかいました。帰りに残りの50万人民元を米ドルに戻したところ、また10万米ドルを手に入れました。なぜなら、為替レートがいつの間にか1ドル=5人民元までに上がっていたからです。
 もうひとりは、より頭がいい。両替で得た68万人民元のなかから50万人民元を取り出し、マンション1軒を買いました。残りの18万人民元を使って中国各地を回ります。すると1年後、購入したマンションが100万人民元まで値上げしていました。さらに彼は、1ドル=5人民元のレートで20万米ドルに両替し、楽しく帰国の道に着きます。

 簡単に言うと、人民元の切り上げは「アメリカ人が消費、中国が支払う」ということです。「その本質は貨幣戦争による経済略奪」と2007年に出版された「貨幣戦争」という本に書かれています。

(つづく)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。

▼関連リンク
アメリカの悲願=人民元切り上げ(下)~日本人が知らない中国事情(76)

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