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歴史の虚像と実像

ゴッホはほんとうに自殺したのか?~ゴッホ伝説の謎
歴史の虚像と実像
2010年11月15日 15:10
中島 淳一(画家・劇団エーテル主宰) 

 六本木の国立新美術館で開催中の<没後120年 ゴッホ展>が、すでに来館者20万人を超える盛況ぶりである。ゴッホと言えばもはや画家の代名詞、その人気は衰える事を知らない。生前はまったくの無名で誰にも相手にされず、死後もしばらくは展覧会を開いても見向きもされなかった。なにしろ絵具代のかわりにタンギーが受けとっていた絵が1点わずか30フランで売り出されたくらいなのだから。今ではゴッホの作品の価格といえば常に100億を超える勢いだ。
 何が"ゴッホ"というマーケットをかくも変容させたのか。ゴッホの死から24年後、1914年に弟テオの妻ヨーが編集した『ゴッホ・弟への書簡集』の出版である。ゴッホの人間としての存在感が作品の評価を加速させるのに成功したのだ。春も秋もないただ真夏の焼け尽くすような人生を駆け抜け、遂にはピストルで自らの命を絶った悲劇の画家ゴッホ。それを支えた唯一の理解者、弟テオの献身的兄弟愛。人々は<伝説>に酔いしれ、ゴッホを地から天に押し上げた。だが、ほんとうにゴッホは自殺したのか。キリスト教の伝道師まで務めたゴッホが果して自ら命を絶つという大罪を犯すであろうか。
 弾丸は左の肋骨をかすめて腰を貫通し、右の股のつけ根に達していた。ほんとうに死ぬつもりなら、何故こめかみか心臓を撃たなかったのか。左脇腹からわざわざ斜め下方向に撃つのは不自然というより、右利きのゴッホには不可能である。第3者が撃ったと考えるのが妥当であろう。
 自殺という事になったのは、ゴッホ自身がそう告白したからだ。だが、それは誰かをかばっていたからに他ならない。弟テオはゴッホの死からわずか3カ月後、精神病院に入院し翌年の1月に死んでいる。何かしら推理したい衝動に駆られないだろうか。
 事実はどうであれ、"伝説"が真理になってしまった以上、ゴッホ他殺説は眉唾物に思われるかもしれないが、小林利延著『ゴッホは殺されたのか』(朝日新聞)を御一読いただければ、その考えは一変するだろう。

<プロフィール>
中島 淳一(なかしま・じゅんいち)氏中島 淳一(なかしま・じゅんいち)氏
1952年、佐賀県唐津市出身。75~76年、米国ベイラー大学留学中に、英詩を書き、絵を書き始める。ホアン・ミロ国際コンクール、ル・サロン展などに入選。スペイン美術賞展、優秀賞。日仏現代美術展(82、83年)、クリティック賞、ビブリオテック・デ・ザール賞。ARTEC・カンヌ、欧日芸術振興賞、アートブランドエクイテイ大賞。フィレンツェ美の奇蹟展、リッカルド・アマディ芸術文化大賞など受賞多数。詩集「愁夢」、「ガラスの海」、英詩集「ALPHA and OMEGA」、小説「木曜日の静かな接吻」「卑弥呼」、エッセイ集「夢は本当の自分に出会う日の未来の記憶である」がある。86年より脚本・演出・主演の一人演劇を上演。企業をはじめ中・高・大学校での各種講演でも活躍している。福岡市在住。


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