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中央資本に翻弄される地場業者 「天神プレイス」裁判の教訓(上)
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2010年11月16日 15:20

 これまでたびたび報じてきた「天神プレイス」裁判だが、改めて振り返ってみると、地場デベロッパーが中央資本に揺さぶられ続けた結果だと言える。単なる事件として捉えるだけでなく、地場マンション業界の将来のためにも教訓化しておくことが重要だろう。

<バブルを演出したスキームの台頭>

 まずは、デベロッパーの業績急伸の支えとなった不動産証券化・流動化スキームについて、少し触れておきたい。1998年施行の「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」により、資産の流動化が促され不動産投資の歴史が大きく変わった。
 このスキームでは、いくつかのプレイヤーとの契約条項がある。08年11月に民事再生法を申請したディックスクロキの大型マンションの事例では、まず開発業務受託者である同社をオリジネーター(原資産保有者、資産譲渡人)として、合同会社(SPC、特別目的会社の場合も)をつくって出資を募った。これは、オフバランス化や資金調達の多様化などが目的だ。資金は、金融機関からのノンリコースローンや匿名組合出資者による出資(私募取扱)で調達した。一方で、オリジネーターの信用・倒産リスクなどからSPCを独立させるため、有限責任中間法人を設立。また、土地所有者である同社は土地の信託受益権を、信託銀行を介してSPCに譲渡する。
 また、このスキームでは、不動産価格が上昇し続ける、売却先となるファンドの存在が明確になっていることなどが大前提だったが、金融市場の急変から証券化・流動化スキームに依存したビジネスモデルが成立しなくなり、多くのファンドが不動産市場から手を引いた。現在、売買仲介報酬料をめぐって裁判沙汰になっている大型物件「天神プレイス」も、そうした時代背景のなかで完成し今日に至る。

<福岡では斬新な手法 二度の証人尋問の印象>

天神プレイス  地場デベロッパーのアーム・レポが手掛けた「天神プレイス」は、土地所有者である都市再生機構(UR)との間で50年の定期借地権が設定されており、同物件を信託物件とすることで生まれる「信託受益権」をファンドのセキュアード・キャピタル・ジャパンに売却した利益で、施工者の大成建設とその下請に工事請負代金45億円を支払う予定だった。
 SPC組成型ではない点で、当時流行していたスキームとは性質を異にするが、信託受益権の出口をファンドに設定するという点では、やはり当時ならではの利益獲得スキームのひとつだったと言えるだろう。「東京ではいくつかの事例がすでにあったが、福岡では斬新な手法だったと思う」と、ある同業者は振り返る。アーム・レポの田中浩和社長自らが会得した不動産証券化の知識と、それに裏打ちされた「福岡都心にオアシスをつくりたい」という想いが結実したと評価できる。
 ところが、途中で信託受益権に係る金融商品取引法が改正され、信託物件とするための基準が厳格化。手続きに手間取り施設オープンの時期が延びるなかで、不動産市況の悪化が進みセキュアード社は購入を渋りだした。次の買い手も見つからず、焦った大成建設はアーム・レポに対して工事請負代金の支払いを迫った。こうした状況下で、アークエステート代表の山本博久氏がやずやとの売買交渉の仲介役となった。
 事件の詳細については、すでに弊誌2月22日号や9月27日号で報じてきたため割愛する。ここでは、9月9日、10月12日の二度にわたって行なわれた証人尋問の印象を述べておきたい。9月の方は、アーム・レポ企画開発事業部マネージャーの山口氏と大成建設管理部事務センター長の羽場氏の両名が証人として立った。はっきり言えば、両名とも今回の交渉事の中核にはいなかったため、アークエステート側の弁護士の質問にはほとんど「わからない」「記憶にない」(山口氏)、「私は把握していない」(羽場氏)と歯切れが悪かった。

(つづく)

【大根田 康介】


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