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上海最先端レポート

人民元切り上げで大ピンチ!(下)~日本人が知らない中国事情(78)
上海最先端レポート
2010年11月18日 08:43
劉 剛

<アメリカによる自国通貨安値誘導の歴史>

 過去40年間、アメリカは「世界通貨」の優位性を利用し、少なくとも3回の貨幣戦争を巻き起こし、ドルの変動を武器にほかの経済体に打撃を与える一方、自分はぼろ儲けしました。
 1971年以前、「ブレトンウッズ体制」に従い、米ドルの発行は所有する黄金量によって決められていました。つまり、アメリカが"自由自在"にドルを印刷することができなかったのです。1971年、アメリカは、他国が「黄金に変える」という要求を拒否したことを糸口に、「ブレトンウッズ体制」を崩壊させました。

第1回 アメリカVS石油輸出国機構(OPEC)(1971年~1974年)

 ドル増刷の加速およびドル安に影響されて、石油1バレルが2ドルから15ドルまで値上がりしました。つまり、1974年時、石油輸出国が15ドルで買えた黄金が、1971年の2ドル時に相当します。1970年から1980年までの間、世界規模でインフレが発生し、10カ国以上からなる「石油輸出国機構」を含む経済体がひどい打撃を受けました。

第2回 アメリカVS日本(1980年~1990年)

 1985年、日米間で「プラザ合意」が調印されたことを皮切りにして、1ドル=240円から1989年には80円台まで切り下げました。ドル切り下げ一方、巨大な金額のアメリカ資本が日本に流入し、円上昇のメリットを享受した一方、日本の不動産や株式市場の巨大なバブルを吹き飛ばしました。1990年以降は、ぼろ儲けしたアメリカ資本が撤退したことにより日本経済の長引く不況が始まりました。

第3回 アメリカVS東南アジア新興諸国(1990年~1997年)
 韓国、台湾、香港などは、数十年の勤勉な努力によって財産を蓄積し、「収穫の季節」になったと判断されました。今までと同じ手法で、ドルを安くさせ、新興諸国の通貨を切り上げさせながら、ドル資本が大量にこれらの国に入り込み、資産バブルを発生させました。その後、バブルを破り、急落させてアメリカにおける豊作を実現したのです。
 例をあげると、香港の住宅価格は1平米あたり3万香港元から12万香港元まで上昇しました。数倍の収益を手に入れ、満足したアメリカ資本が帰った後は、住宅価格が1平米あたり4.2万香港元まで暴落しました。65%の下げ幅により、現地住民が重い代償を払ったのです。
 これは「1997年アジア通貨危機」と呼ばれます。インターネット上の「ウイキペディア」では、次のように記録されています。「アジア通貨危機(the Asian Financial Crisis)とは、1997年7月よりタイを中心に始まった、アジア各国の急激な通貨下落(減価)現象である。この通貨下落は米国のヘッジファンドを主とした機関投資家による通貨の空売りによって惹起され、東アジア、東南アジアの各国経済に大きな悪影響を及ぼした」。
 当時の新聞には「東南アジア一部被害国の国民生活レベルが20~30年前の水準に戻った」という記事もあり、韓国の民衆が自家の財産を持ち出し、破綻した国家を救ったという報道もあったそうです。

 そして、第4回目のアメリカによる自国通貨安値誘導は、中国の人民元に対して行なわれるものであると推測します。
 過去40年の歴史を顧みると、ドルが強い時は、ほかの経済体の資産が最も安い時です。強いドルで安い資産を仕入れした後、ドルを氾濫させ、すでに手にした資産の価格をつり上げて出荷し、1回のサイクルが完了します。同じようなサイクルを繰り返すことが、アメリカが今日までその強大さを維持しているひとつの要因かもしれません。普通よりはるかにレベルが高いビジネスだと感心します。

<中国政府の対応>

中国のお金(1)人民元切り上げを徐々に行なう。
 輸出は、国にとって有力な経済牽引ツールです。したがって、少しずつの上昇こそ国経済全体を守ることになります。一旦、人民元の為替レートが急上昇すれば、輸出産業が大量に滅ぼされるに違いありません。輸出産業が国内雇用と密接に結びついていることから、失業による社会不安定を招くことが推測できます。国内の安定は、政府にとって大事なことです。

(2)ホットマネーの流入に厳重に注意をする。
 人民元切り上げ、銀行利息の格差などから、国際的にホットマネーの流入が後を絶たなくなります。それらによって、国内のインフレ加速や市場に偽の繁盛がもたらされると予想できます。ホットマネーが突然、大規模に撤退すると、国内経済にとって非常に悪影響を及ぼします。ホットマネーを厳しく制限することは、全体的に有意義と言えます。

 現実的に見て、アメリカ経済が全世界の20%超を占める以上、それに対抗するのはかなり困難です。今までも成功例があるとは思えません。しかし、これまでなかったからこそ、成功をより一層期待されています。いつも舞台で同じシナリオが上演されるのは、観客にとって、とても退屈なものだと思いませんか?

(了)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。


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