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特別取材

懸念される年末からの倒産増加 債権回収の心得を伝授
特別取材
2010年12月 6日 13:00

弁護士法人アクティブイノベーションウエスト福岡事務所 所長 清田 知孝 氏

 最近の企業の倒産件数は減少していると言われており、中小企業金融円滑化法によるリスケが果たした役割は一定の評価がされている。しかしながら、同法制定後1年を経過し、リスケ先のなかには事業再生が進捗していない中小企業も多いと見られており、今後の倒産多発が懸念されている。このような状況で、債権回収策の如何によっては、多額の損失を被ることがある。その対応策について、清田弁護士にわかりやすく解説していただいた。

<債権回収に際してのチェックポイント>

清田知孝氏 私のところに借金問題で相談に来る個人事業者や会社の代表者のなかで、借金が増大した原因として圧倒的に多いのが、「売掛金の未回収(不良債権化)」です。どの個人事業者や会社も、債務者だけでなく債権者としての立場を持っています。そして、債務者としての義務をきっちりと履行するためには、債権者としての権利をしっかりと実現する必要する必要があります。この権利の実現が、相手方取引先の破産などで不可能に近い状況になってしまったとき、経済的打撃の少ない経営をしていれば何も問題ありませんが、そのような事業者・会社はほんの一部で、ほとんどは債権回収の重要性を非常に高い位置づけにされているはずです。
 債権回収において注意が必要な場面は非常に多いのですが、今回はとくに関心が高いと思われる「相手方の信用不安発生時の債権回収に際するチェック」について述べていきます。
 相手方の信用不安としては、手形であれば「ジャンプをしている」「不渡りを出した」「手形が市中に出回っている」、そのほかでは「倒産手続をしている」など、いろいろなものが考えられます。そして、取引形態によって異なるものの、そのような場面での債権回収の方法として、「商品・リース物件の引き揚げ」「債権譲渡」「相殺」「代理受領」「債権者代位権の行使による回収」「法的手続き(支払督促・和解・調停・訴訟)」「仮差押・仮処分の活用」「強制執行」「担保権の実行」「第三者からの回収」など、さまざまな選択肢があります。
 しかし、その際に注意が必要なチェックポイントも当然ながら存在します。以下、そのうちのいくつかについて説明していきます。

■商品・リース物件の引き揚げ
 「取引先に商品を納入していて、倉庫に商品が保管されている場合」についてです。ポイントとなるのは、「商品の売主は買主が倒産して代金の支払いができなくなった場合、商品を引き揚げて少しでも未回収代金を減らすことができるか」ということです。
 この場合、通常は売買によって商品の所有権は買主である取引先に移転しているので、商品を引き揚げるためには取引先の承諾が必要になります(無断で引き揚げれば、「窃盗罪」に問われかねません)。そしてこの承諾は、単に売主が自由に商品を処分できる権利を獲得するというものではなく、商品をもって未払代金債務の弁済に充てるという内容でないと意味がありません。これを「代物弁済」と言います。
 もっとも、このような同意を得ること自体が面倒だと思えば、契約時に商品の所有権を留保する特約(所有権留保特約)を盛り込むという方法があります。取引先との信頼関係を考えながら、盛り込むべきか判断しましょう。
 そのほかには、売買契約自体を解除して白紙の状態にし、商品を引き揚げて自由に処分するという方法もあります。

■債権譲渡
 取引先の経営が悪化している場合、取引先の持っている債権を譲り受けて、これを自分の債権の回収に充てる方法があります。これは、取引先が持っている債権が優良かつ回収の見込みが十分なものであれば、効果的な債権回収の方法です。
 債権譲渡は、債権譲渡人と債権譲受人との契約で、債権を譲渡されてしまった者(債務者)との関係では、取引先から通知してもらうか、債務者自身が承諾する必要があります。また、将来発生する賃料債権を譲り受けることも可能です。
 注意点としては、取引先の経営が悪化している以上、債権を二重に譲渡されて競合する可能性があります。そのため、早急に通知書を債務者に送付してもらう必要があります。

■代理受領
 「代理受領」とは、「債権者が債務者に対して有する債権を確保するために、債務者自身が有する債務者(第三債務者)に対して有する債権について、債権者が取立てないし受領の委任を受けて金銭を受領し、それを相殺などによって自らの債権の弁済に充当する」という方法です。これは、債権を質入れすることと、何ら変わらない債権回収方法です。
 そして、代理受領の契約内容は、「債権取立ての委任は、債権担保を目的とするものであり、債務者は自分の債務を完済するまでは委任を解約できないこと。他の第三者に譲渡・質入れまたは取立ての委任ができないこと。債務者本人も取立てができないこと」を盛り込んだものにし、債権回収を独占できるようにして、その契約書または委任状を呈示して、第三債務者の承諾をもらうという流れになります。

■債権者代位権
 「取引先の資産内容を調査したところ、受取人が会社の生命保険契約があった」という場合では、それを解約して解約返戻金の支払いを代わりに受けるという方法が考えられます。そして、取引先への売掛金請求権について、判決・公正証書などの債務名義がある場合は解約返戻金支払請求権を差し押さえて取り立てればよいのですが、そうでない場合は次に保険契約者である債務者が任意に保険解約に応じてもらい、返戻金をそのまま受領するという方法もあります。
 しかし、多くの場合は協力を得るのは難しいでしょうから、債務者の代わりに権利行使する「債権者代位権」ということになります。

■法的手続きによる回収
 法的手続きのなかで、早く強制執行が可能な債務名義を取得する方法として、「支払督促制度」というものがあります。これは、適式な申立に対して相手方が異議を述べなかったことを条件に、証拠調べなどの裁判手続を省略して、申立内容を認めてもらって判決と同様の効力を有することになる手続きです。そして、相手方が異議を述べないようにするために、売掛金債権を証明する契約書などの書面が必要になります。

■第三者からの回収
 「取引先が倒産したけれど、代表取締役には資産がある」場合です。原則として、会社と取締役個人とは別人格ですから、個人保証を取り付けていなければ、取締役に対して売掛金の支払いを請求することはできません。しかし、倒産の原因が「粉飾決算」や「放漫経営」、「会社財産の横領」、「回収見込みのない貸付」などの場合においては、取締役としての責任を追及することも可能です。

<債権回収に当たっての専門家との連携>

 ここまで債権回収における法律的な説明をしてきましたが、債権回収をスムーズに行なうためには、日常の情報収集が何よりも大切ということは言うまでもありません。債権回収の基本は取引先との信頼関係ですから、支払いが遅れた場合には、まず電話や訪問で直接取引先に問い合わせることになるでしょう。その後、「同業者や近隣からの情報を得る」「信用調査会社を活用して信用状況を調べる」「財務諸表などを入手する」などが必要になります。
 そこから「どのような債権回収方法が適当か」ということが見え、迅速な対応をすることができます。なお、債権回収作業のために本来の業務に支障をきたしては意味がありませんので、迅速な対応となると専門家との連携が必要になるでしょう。

<プロフール>
清田知孝清田 知孝(きよた ともたか)
2004年、明治大学法学部卒業。07年、中央大学法科大学院卒業。08年、弁護士登録。現在、弁護士法人アクティブイノベーションウエスト福岡事務所所長。


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