（株）トラヤミートセンター 代表取締役社長 小川 邦敏 氏
伊都安蔵里 館長 八尋 建蒔 氏
自然が豊かな糸島市。志摩半島の海を中心にした観光資源への注目度は近年、非常に高くなってきている。一方で、糸島市には里山の美しさもあるのだが、その観光資源は目下、充分に生かされているとは言いがたい。昨年、日向峠から深江までの県道49号線を「伊都国街道」と銘打って、街道沿いのエリアを活性化させるアイデアが生まれた。その生みの親である（株）トラヤミートセンターの小川邦敏社長と、伊都国街道エリアで野菜の直売やカフェ、農業体験などが楽しめる「伊都安蔵里（いとあぐり・事業母体はマキハウス）」の八尋建蒔館長に地域活性化をうかがった。
＜まずは知ってもらうこと＞
八尋 昨年、糸島新聞で小川社長が地域活性化を呼びかける記事を拝見しました。県道大野城二丈線の日向峠から深江（糸島市二丈町）までを「伊都国街道」と名付けて、糸島市の山あいを元気にしようと試みられているとありました。
小川 志摩半島のサンセットロードなど海沿いの地域に比べて、山手側は観光に来てくださる方が非常に少ないのが現状です。私も30年前からこの地で精肉店を営んでおりますが、観光客の少なさは身にしみて感じております。この地にはたくさんの見どころがあるにもかかわらず、あまり知られていないために立ち寄ってもらえていないのだと思いました。そこで少しでも知っていただくために、このエリアを伊都国街道と名付けて、活動を始めたのです。
八尋 佐賀県の三瀬に通じる道には大きな看板が掲げられていて、認知は深まってきていると思います。
小川 目立つ看板ですからね（笑）。多くの方に知ってもらえていると思います。まずは知ってもらうことが重要と思い、活動を始めました。新聞が取り上げてくれた後、私は街道沿いのお店を一軒ずつ訪ねて、街道発展のための協力をお願いしました。街道を浸透させるためにオリジナルののぼりを用意し、皆さんに配って設置依頼をしたのです。依頼した直後は皆さんが店先にのぼりの設置に協力してくれていましたが、時間が経つにつれて一つ、また一つとのぼりを撤去していってしまったのです。どうしたものかと思っていた頃、知人から「どうやら妬みがあるらしい」と聞きました。地域のためを思っていたのですが、とても落胆させられました。
八尋 賛否両論、さまざまな意見があろうと思います。けれども、私は小川社長のお考えは間違っていないと思いますし、せっかく街道の名前も浸透してきていますので、ぜひとも続けてほしいです。街道の活性のための、具体的なアイデアも持っていらっしゃるとうかがっています。
小川 大きいものでは２つあります。一つは通行手形です。タバコの箱の半分くらいの大きさの木製の手形をエリア内の協賛店に提示すれば、何らかのサービスを受けられるというものです。たとえばミカンを３つさしあげるとか、何割引きだとか、無理のない程度で来てくださった方におもてなしをするためのツールです。心がこもったサービスをすることで会話が弾んだり、温かい気持ちになってもらったりして、また来たくなるような街にしていきたいという考えで立案しました。もう一つは観光マップです。このエリアには雷山観音や高須観音の神楽など、たくさんの見どころがあります。それら観光スポットと地域のお店が一目で分かる地図があったら、次はここに行ってみようという方が増えるのではないかと思っています。
【文・構成：柳 茂嘉】
八尋建蒔（やひろ・けんじ）氏
昭和46年福岡県生まれ。食と農と家を結ぶ複合施設、伊都安蔵里（いとあぐり）の館長を務める。築150年の古民家を改造した館内でスローライフの実践や系列農業法人で無農薬有機栽培の普及に尽力。
小川邦敏（おがわ・くにとし）氏
昭和16年長崎県生まれ。糸島の山手の入り口に精肉店トラヤミートセンターを開き、30年間同地で営業している。地域を発展させることが地域の豊かさにつながると信じ、伊都国街道構想を立ち上げた。
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