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全国初のPFI破たん、タラソ福岡の再生~福岡市・行政改革の実態(30)
行政
2011年2月21日 07:00

 全国初のPFI事業の破たん事例となったタラソ福岡ですが、4カ月後の平成17年4月には、市による公費の追加負担なく、無事に事業再生することができました。
 このときの担当者のひとりであった私は、まったく前例がなく、どうして良いのか分からずに手探り状態のなか、当時の市長室や環境局の仲間たちとかなり苦労しましたが、なんとかゴールにたどり着くことができました。その要因は、大きく3つあげることができます。

 ひとつは、「トップの決意と明確な方針」です。
福岡市役所 当時、市による公費の追加負担なく事業再生するためには、タラソ福岡事業を8億5,000万円で買い取ってくれる事業者が必要でした。破たんした事業は買い叩かれるのが相場であり、なかなか買い手が見つからずに苦労しました。7億5,000万円なら買い取っても良いという事業者から連絡がきましたが、その金額なら1億円の追加を市が公費で負担しなければなりません。挫けそうになりながらも踏ん張ることができたのは、当時の山崎広太郎市長の「市による追加の公費負担は絶対にしない。事業の買い手が見つからなければ閉鎖してもかまわない!!」という強い決意と明確の方針があったからです。

 ふたつ目は、「情報公開」です。
 「このままではタラソ福岡は、11月末で破綻することになる」との情報が入ったのは、平成16年の8月頃でした。同年9月にはPFI事業者が取締役会で施設閉鎖を決定し、事業破たんが公になるという事態になり、取り急ぎ、市がつなぎの支援をして破たんを先送りするのか、それとも事実を隠さずに公にするのか、という選択に迫られました。当時の山崎広太郎市長をはじめとするトップの決断は、「包み隠さず公表する」というものでした。その結果、「全国で初めてのPFI事業の破たん」とマスコミで広く報道され、福岡市役所にとっては一見不名誉な事態となってしまいました。
 しかし、「ピンチはチャンス」です。マスコミの報道が全国に広がったおかげで、約8億5,000万円でこの事業を買い取ってくれる事業者が現れてくれました。情報公開の大切さを痛感した出来事でした。

 3つ目は、有能で誠意ある専門家(アドバイザー)の存在です。
 当然ながら、タラソテラピーやフィットネスジムなどの事業分析は、市役所にはノウハウがありません。市の立場を理解して、綿密で的確な分析をし、誠意あるアドバイスをしてくれる専門家の存在が、事業譲渡の困難な交渉にあたって大変有益でした。
 「トップの決意と明確な方針」「情報公開」「有能な専門家」という要素は、今回の事業再生にとどまらず、少子高齢化・人口減少、経済の低成長、市民の価値観の多様化という「成熟社会」の様相を呈する現代の行政運営にとっても不可欠なものであると考えています。

(つづく)
【寺島 浩幸】

≪ 第29回「タラソ福岡=PFIの失敗(後))」 | 

<プロフィール>
寺島浩幸氏寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
 現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。

<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援

▼関連リンク
寺島氏ブログ
・ツイッターは、コチラ


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