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民主党 「ドン菅・臨終内閣」の罪~延命装置ズタズタで浮遊霊状態(上)
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2011年2月21日 15:00

110221_onda01.jpg 成仏できずに彷徨う亡霊ほど気の毒、かつ迷惑なものはない。2月6日の愛知県知事選、名古屋市長選で予想通り民主党は惨敗。統一地方選を前に菅直人内閣への民意が明確に示された。それでも鈍感か鉄面皮か、菅首相は他人事のように8日からの予算委員会、その後の党首討論でも見苦しい抱きつき延命作戦を展開。菅内閣が続くほどに日本は疲弊の度を増すばかりだが、臨終から49日法要まですでにカウントダウンが始まっている。

 愛知県での知事選、名古屋市長選翌日の2月7日、庶民感覚を売りにする夕刊フジ、日刊ゲンダイのライバル両紙は、申し合わせたように「菅臨終」とまったく同じ大見出しを掲げていた。駅頭やホームでとりあえず手にした読者は、買った後でどの新聞かに気づいたのではないか。論調の違う両紙が、期せずして同じ見出しを掲げるのは、それが大多数の国民目線だからだ。
 仏教では死者を弔うための葬儀に続き、初七日と49日に法要を行うのが一般的だが、本来は7日、13日と7日毎に行い、最後が49日である。読経は死者の霊(魂)を浄化して1日も早く成仏させるためのもので、浮遊霊にとって49日目はまさに土壇場、締め切り日だ。『チベットの死者の書』によれば、成仏できなかった霊はメスの子宮に集まるという。再び生まれ変わって修行のやり直し、すなわち輪廻転生するが、必ずしも人間に生まれ変わるとは限らない。魂のレベルによつて昆虫や爬虫類もあり、となればそれが地獄というものなのだろう。

 2月17日の民主党親小沢派16人の反乱は、さしずめ菅内閣の13日法要といえよう。
 菅内閣はすでに臨終を迎えているにもかかわらず、いまだにそれを自覚できない浮遊霊そのものだ。尖閣問題で外交上の大失態を犯し、内閣改造せざるを得なくなったところで「死に体」寸前を自覚したのだろう。新たな延命装置も取り付けたが、それらもいまや切れたも同然だ。
 まず菅内閣以前の問題として、民主党には政党としての要件が欠落していることへの自覚がない。党綱領という"憲法"を持たない民主党は、『政権交代経典』を手にひたすら「政権交代」をお題目として唱えてきた。それが自民党の敵失続きで現実味を帯びてくると、代わって掲げたのが『マニフェスト経典』だ。「政権公約は破られるもの」、という既成概念を嫌ってカタカナ語化。「公約は守られるもの」というイメージ戦略を打ち出したものの、言葉を換えたところでしょせんは小手先。公約破りを野党から攻め立てられるのは当然、党内からも反省と見直し論が出て自縄自縛に陥っている。
 子ども手当に代表される人気取り、集票政策より、まず責任政党としての綱領づくりが必要だったにもかかわらず、幹部の誰もその音頭取りをしなかった不思議政党である。最近やっとそれに気づいたらしく、菅氏は党代表として綱領づくりに着手することを表明。岡田幹事長を本部長とする党改革本部内に2月1日、党綱領検討委員会(直嶋正行会長)を設置したがもはや遅すぎる。

 党綱領という大動脈のない民主党にあって、菅内閣発足時から最大の延命装置にしてきたのは「小沢切り」だ。「政治とカネ」問題のシンボル、小沢一郎元代表を議員辞職ないしは離党に追い込んでそれなりのケジメをつければ、世論の支持を得て政権は安定するという読みだ。とくに昨年9月の代表選で小沢氏に勝ち、第1次改造内閣を発足させてからは「小沢切り」が加速。反小沢派からは「除名」という勇ましい声まで上がったが、その後は完全に腰砕け。最終結論が2月14日の一時的な「党員資格停止」。それも党倫理委員会で小沢氏の弁明を聞いて最終決定という手順となれば、もはや論ずるにも値しないし、いまとなっては雲散霧消したも同然だ。

(つづく)

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恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。

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