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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (107)
経済小説
2011年4月 5日 10:56

 以上3社の入札の結果、大手と株式会社セントラルレジデンスの提示額は、ほぼ同じだった。しかし管理物件の戸数変動を加味するとオーナーズクラブが高かった。両者とも3億円弱の価格を提示してきていたが、大手のほうは管理戸数が減少した場合は譲渡対価も減額することと、本社移転を検討することの条件を付しており、従業員についても全員の無条件継続雇用は明言していなかった。私は、これでは買い手はまったくリスクを負っておらず、結局債権者に配当する原資も縮小してしまうのではないかと思った。また、その大手会社は以前のDKホールディングスと同じ不動産開発業系で、親会社と管理会社の間で倒産隔離はなされているとはいうものの、親会社の自己資本比率は10%を切っていたため、オーナーの声としては、また同じような経営破たんは御免だ、とするものが支配的であった。一方、株式会社セントラルレジデンスは、現状より管理戸数が減少したとしても譲渡対価は変更しない旨を明記していた。
 このようなことからオーナーとDKホールディングスの一部役員が出資して新設する株式会社セントラルレジデンスへの継承を決断した。弁護士およびFAが立会いのもと入札書を開封し、公正な審査の結果、決断したものである。

ある程度社員が安心できる相手先への売却となるのではないかと... この結論に対して一部の銀行債権者から異論が出た。曰く「出来レースではないのか?」「最初から意図していたのではないか?」という指摘である。
 しかし、このような指摘は的外れであった。なぜなら黒田会長は、たしかに地元再生ファンドを活用しての事業譲渡になることを期待してはいたが、その選定プロセスはこれまで述べてきたように、相対交渉などではなく公開された入札によった。入札手続きは、弁護士やフィナンシャルアドバイザーなどの第三者が参加して開封されたため、結果が故意に捻じ曲げされていることなどあり得ない。事実、銀行債権者の間でも、きちんと入札を行なったことを評価する声もあった。
 以上のようなプロセスを経て事業譲渡先を内定することができ、2月末日には裁判所から事業譲渡の許可が得られることを発効条件とした事業譲渡基本合意書を締結した。

 結局は、地元ファンドと組んだセントラルレジデンスが落札することになったが、そうなると社内ではファンドが将来、株式を売却した場合、どうなるのか、あるいはどこに売却されるのかという不安が高まった。しかし、私は、この懸念に対しては、ナンバショットインベストメンツの企業再生の方針および実績からみても、ある程度社員が安心できる相手先への売却となるのではないかと見ている。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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