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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (123)
経済小説
2011年4月21日 07:00

<会社の終わらせ方>

 事業譲渡が実行されたことにより、DKホールディングスは残る資産を処分して、弁済をするだけの会社となった。そのため、いよいよ会社の清算に向けての作業を意識するようになった。私は管理担当の取締役として、最後まできれいに清算し後顧の憂いがないようにしたいと思った。そのためには、放置したり税務署に休眠届を出すだけにするのではなく、きちんと解散決議を行ない、その後清算結了までの作業をしたかった。そのため会社の清算に関する図書を購入して研究した。

 まず債務の免除を受けた後、通常に会社を清算しようと思えば4回の株主総会が必要であるとわかった。(1)解散決議、(2)解散日現在の財産目録と貸借対照表の承認、(3)清算事業年度の総会、(4)決算報告承認の総会......である。これが普通の非上場会社であれば何ら負担は感じない。非上場会社の場合は株主の数が数人と限られ、株主の属性も親族や創業時パートナーなどであるためさほど揉めることもないと考えられるからである。しかし当社の場合は、もと上場会社として800人の株主を抱えていた。今後きちんとした処理を行なおうとすると、800人の株主に対して4回の総会を開催しなければならないということである。

私は、どうすればよいのか分からなかった... 私は、どうすればよいのか分からなかった。
 当初考えたのは、再生計画に100%減資を盛り込めないか、ということである。民事再生会社で現法人格を維持しながらスポンサーを導入する場合は、再生計画にその旨定めることで既存株式を100%減資し、新たにスポンサーからの出資を入れることになる。しかし代理人弁護士に相談したところ、この制度は現法人格を維持して再生を目指す場合を想定したものであって、単に清算事務の簡略化のために再生計画に減資を盛り込むことは違和感がある、ということであった。

 もうひとつの課題は、平成21年3月期の定時株主総会の問題である。当社は会社法でいう「取締役会、監査役会、会計監査人設置会社」であった。上場会社として重装備なガバナンス体制を選択していたのである。ところが、会計監査人(現実的には監査法人)からは、民事再生に伴って監査契約を解除されており、すでに定款違反状態となっていた。そのほか会社法決算に必要な附属明細書などもきちんと作成できそうになく、一般株主の審議に付せる状況になかった。そういう意味でも、出来れば株主を全て身内にしてしまいたいと思った。
 そこで、総務部長に相談するとともに、当社がお世話になっていた司法書士や税理士、それに事業譲渡のFAをやっていただいた金井管財コンサルタンツ福岡などにも意見を聞いた。

 上場時代には考えもしなかったことだが、まずわかったのは100%減資だけでは株主権は消滅しない、ということだ。検討の結果、当社の定款を変更して種類株発行会社とし、現在の普通株式を全て無償取得条項付株式に転換し、その後、全株の無償取得を実行する、というやり方が可能であるとわかった。この場合は臨時株主総会を開催して、一連の議案の特別決議を通せばよかった。もちろん株主総会を一回は召集しなければならないが、黒田会長および親族で議決権の4割を押さえていたため、特別決議を得ることは可能であろうと思われた。無償取得した株式は償却せずそのまま自己株式として持っていれば、減資益も発生しない。これらのことを弁護士に相談したら「それでやってください」とのことであったので、私はこの線を実行することで後の会社清算を簡略化することにした。

 そのために定時株主総会の開催期限を目前にした平成21年6月23日に、臨時株主総会を開催するべく800人の株主に召集通知を発送し、福岡市内のビジネスホテルで臨時総会を開催する運びとなった。


〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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