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九州から興す!日本経済

アジアの活力を九州の成長へ(前)~特別座談会「アジアビジネスの可能性と課題」
九州から興す!日本経済
2011年5月16日 07:00

 当座談会の数日前、東北地方太平洋沖大地震が起こった。これにより、日本の経済復興があらためて重要な課題となった。日本はアジアのなかでも外交が下手など負の部分もさまざま取りざたされている。しかし一方で、今回の震災により、耐震技術や国民のマナーなど海外諸国が見習うべきところも大きくクローズアップされた。今回、アジアビジネスに深く関わってきた3人に、それぞれの立場から可能性と課題、そして何をすべきかについて言及していただいた。

(聞き手:I・B編集長 大根田 康介)

 ―まずは自己紹介かねがね、それぞれのお立場や仕事についてお話しいただきたいと思います。初めに、「一般社団法人九州・アジアビジネス連携協議会」はどのような組織で、どのような活動をされているのでしょうか。代表の中山さんからお教えください。

九州・アジアビジネス連携協議会 代表理事 中山 良一 氏 中山 (社)九州・アジアビジネス協議会は2010年4月に設立され、主として九州におけるアジアビジネスの情報交換、人材育成を通じて、九州とアジアのビジネス交流などに貢献・寄与しようという活動をしています。今から4年前に、同じような志を持った人たちが、ボランティアとして「九州・アジア/中国ビジネス研究会」をスタートしたのが始まりです。この会合は毎月開催しており、3月で50回を数えました。
 昨年11月からは、国際ビジネス人材を育成するための「実践アジア社長塾」というプログラムをスタートさせました。この事業を通じて、アジアビジネスの活性化を九州から起こそうというものです。講座では、中国でビジネス、駐在経験のある方たちを講師にお招きして、経験やノウハウをお話いただきました。
 第1回は、同席されている国吉先生にもご登壇いただきました。全10回の講座で、今年1月末に第1期が終了したところです。塾生は会社経営者などのべ35人です。講座の締めくくりに、国吉先生が団長で上海へ視察旅行に行きました。まだ第1期が終わったところですが、各方面から高い評価を得ておりますので、2期、3期と続けていきたいと思っています。また、福岡だけでなく、久留米、長崎、宮崎といった地方版もあわせて開催を検討していきたいと思っています。第1期は中国でのビジネス講座でしたが、今後は対象地域をアセアンやインドまで広げていければいいなと考えています。

 ―次に、中山さんとともに活動をされている国吉さんは、これまでどのようなかたちでアジアと関わってこられたのですか。

 国吉 私は昨年6月まで、九州大学アジア総合政策センターで教授をしておりました。同センターは05年7月に設立されました。そのころ私は東芝にいました。東芝社員時代には、現地生産法人の立ち上げや営業・投資などを手がけ、25年以上にわたって中国の経済成長を見続けてきたこともあり、縁あってセンター設立直後の10月に呼んでいただきました。
九州・アジアビジネス連携協議会 理事 国吉 澄夫 氏 九州におけるアジアの情報発信地としての同センターのコンセプトは、「九州大学に行けば、アジアのことは何でもわかる」でした。5年間のプロジェクトでしたが、残念ながら昨年6月で閉鎖ということになってしまいました。大学も独立法人化されて、成果主義が厳しく言われましたが、あのころは成果を測るものさしが曖昧だったような気がします。ただ、私としては、アジア総合政策センターにおいて4つほど大きな成果を残したと思っています。
 1つは、芥川賞選考委員でもある作家の高樹のぶ子さんが中心になった「サイア(SIA、Soaked In Asiaの略)」の活動です。2つ目は、日中韓のアカデミーに関する人たちが集まり、4回シンポジウムを開いたことです。この日中韓シンポジウムでは、文化、産業連携や高齢化、環境、食の安全など多岐にわたる問題を扱い、最終的に5冊の本にまとめました。この日中韓シンポジウムは大きな成果を出したので、アジア総合政策センターの閉鎖に対して内外の関係者から大変惜しまれました。
 そして3つ目は、インドネシアなど東南アジア地域の介護や看護について取り上げたことです。このプロジェクトは、センター閉鎖後はのちにAABC(アジア・アンチエイジング・センター)に軸足を移していきました。最後に4つ目が、九大ビジネススクールや中山さんのアジアソリューションなど、アジアビジネスを志す人たちと共に「九州・アジア/中国ビジネス研究会」を設立したことです。
 九州大学にはビジネススクールや産学連携センターもありますが、いろいろな意味で地域と連携しながら運動を巻き起こすのは大事なことだと思っています。残念ながら、アジア総合政策センターは閉鎖になりましたが、アジアビジネスに対して何かをやろうという動きは地域に根付いてきたので、今後徐々に良くなってくるのではと思っているところです。
 ただ、「産官学」のうち、私の目から見て「産」の部分が不十分という印象でしたので、「九州・アジアビジネス連携協議会」の活動で民間企業である中山社長と連携して、一生懸命やっているところです。

 ―最後に、これからのアジアに向けた行政のビジョンについて、芳野さんから具体的な内容についてお話しください。

 芳野 私は九州経済産業局国際部で、地域産業の国際化支援を担当しています。九州は「アジアのゲートウェイ」と言われるなか、アジアとの経済交流促進をはじめとした国際化支援策の展開に取り組んでおります。
 具体的には、中国および韓国の中央政府組織や経済団体などとの間における経済交流の枠組みである「環黄海経済・技術交流会議」の開催など、国際間の経済交流・人的交流の促進に経済界をはじめとする関係者の皆さん方とともに取り組んできたところです。
九州経済産業局国際部 国際化調整企画官 芳野 勇一郎 氏 また私どもでは、オール九州で九州経済の成長に向けたアクションを起こすべく、去年12月に社団法人九州経済連合会と共同事務局を担当し、「九州成長戦略アクションプラン」を取りまとめました。
 このアクションプランには合計で60のアクションがありますが、全体を通じて一貫しているのは「アジアの活力を取り込み、九州の成長につなげていく」という視点であり、さまざまな取り組みを強化しつつ九州企業の成長に向けた具体的なアクションを実践していくことが主眼となっています。
 その具体的なアクションのひとつとして、「中小企業の海外展開支援」があります。たとえば、中国は九州の最大の輸出先であり、中国への輸出はこの10年間で約5倍になっていますし、アセアン諸国なども成長が著しい状況です。九州の企業がこうしたアジア市場で商品やサービスを売っていく機会は、今後ますます増えていくと思います。
 私たちとしましては、各中小企業者さんがアジアビジネスを展開されるうえで直面される課題の解決を支援することで、中小企業にとって参入しにくいと思われている海外展開のハードルを少しでも低くできればと思っています。

(つづく)

【文・構成:杉本 尚大】

| (中) ≫

中山 良一(なかやま りょういち)

中山 良一氏一般社団法人九州・アジアビジネス連携協議会代表理事、アジアソリューション(株)代表取締役
1972年長崎大学経済学部卒業、同年NEC(日本電気)入社、ジャカルタ、シンガポール、北京事務所長などを経て、アジア第二部担当部長を歴任。中国、インド、東南アジア地域の通信・情報分野などのビジネスに従事。95年NEC退職後、99年(株)アジアソリューション設立、代表取締役に就任。同時にNPO法人・広域活性化研究センター理事長、(財)国際情報化協力センター・コンサルタント、独立行政法人中小企業基盤整備機構国際化支援アドバイザー、(社)九州オリーブ普及協会理事、中国東北財経大学客員教授など幅広く活動。


国吉 澄夫(くによし すみお)
国吉 澄夫 氏一般社団法人九州・アジアビジネス連携協議会理事・事務局長
京都大学法学部卒業。1971年、㈱東芝入社。ロンドン事務所駐在などを経て、79年から中国業務に従事。プラント・技術移転・合弁会社立ち上げなど実務を経験。その後、その他アジア各国への半導体営業/半導体海外現法支援などを経て、93年江蘇省無錫市IC合弁プロジェクトに従事、現地法人設立後、副総経理として赴任。96年帰任、本社中国部長/室長として全社中国事業統括・地域戦略立案を担当。05年10月より、九州大学アジア総合政策センター教授。専門は中国ビジネス(投資戦略)、中国産業論(電子産業)。10年6月末、九州大学アジア総合政策センター閉鎖と共に退任、7月1日より現職。

芳野 勇一郎(よしの ゆういちろう)

芳野 勇一郎 氏九州経済産業局国際部 国際化調整企画官
1979年西南学院大学経済学部卒業、福岡通商産業局(現九州経済産業局)入局。地域経済動向分析や活性化プロジェクトの企画・立案、新エネルギー導入促進などの業務に従事。01年7月、国際部国際企画調査課長として第1回目の「九州アジア国際化レポート」策定を担当。02年4月産業部中小企業経営革新・金融担当参事官、04年7月地域経済部技術企画課長、05年6月経済産業省地域経済産業G地方調整室長補佐、07年4月産業部産業課長などを歴任し、中小企業の経営革新・技術開発支援や地域資源活用・農商工連携の促進などに携わる。09年7月より現職。


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