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世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(8)
未来トレンド分析シリーズ
2011年5月10日 07:00
参議院議員 浜田和幸

 ところで、アメリカを代表するアグリビジネスは、そんなことにはお構いなしで新たな「種子戦争」に心血を注いでいるようだ。その主戦場は、現在も戦闘状況が継続しているイラクやアフガニスタン。もっと直截に言えば、イラクやアフガニスタンの農民が育ててきた穀物や野菜の種子を使えないようにし、モンサントが開発した種子にすべて置き換えさせようとする試みを進めているわけだ。

 実はアメリカは軍事戦略の一環として、これら諸国の農業の在り方を根底から変えようとしている。イラクでもアフガニスタンでも法律を変えさせ、アメリカが提供する種子を使わざるを得ない状況を作り出したのである。言い換えれば、伝統的な土着の種子を一掃し、アメリカの種子メーカーが開発した遺伝子組換え作物を全面的に導入する計画が静かに進行中といえよう。

けし たとえば、アフガニスタンのケース。アメリカ軍の特殊部隊は民生部門を立ち上げ、アフガニスタンの市民や農民に対する職業訓練や雇用の機会を提供している。アフガニスタンの農民の間では芥子(けし)の実の栽培が盛んであった。いわゆる麻薬の原料だ。しかし、これは回り回ってアメリカに持ち込まれ、社会を内部から腐らせる原因にもなっている。そこでアメリカ軍は、アフガニスタンにおける芥子の実の栽培をやめさせるためにも、穀物栽培に転換するように教育や必要な援助を行なうことになったのである。

 アメリカ軍はそうした目的のために各地に農業訓練センターを立ち上げた。実際には米国国際援助庁(USAID)がこうした施設の運営にあたっている。とは言え、日常的な業務はアメリカのコンサル会社ケモニクスが担当。同社はUSAIDを主たる顧客として、世界各地でインフラ整備や農業関連プロジェクトを請け負ってきた。同社のドゥレイマン社長は「我々はアフガニスタンにおいて農業ルネッサンスをもたらしつつある」と胸を張る。

 あまり知られていないが、アフガニスタンは30年前には農業の輸出国であった。アメリカ軍はアフガニスタンへの侵攻に際し、「2007年までには同国が再び食糧に関して自給自足のできる体制に引き上げる」とうたっていた。しかし、今日の状況を見る限り、食糧の自給自足は「絵に描いた餅」に終わっている。

 その背景には戦争後の復興計画が進んではいるものの、実際にその恩恵を被っているのは地元の農民や市民ではなく、ケモニクスに代表されるアメリカの援助ビジネスに携わっている企業が中心となっているからだ。いずれにせよ、アフガニスタンの農業を復興させるために最も重要な資源は種子である。

(つづく)

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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。


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