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東電・清水社長はコストカッター(前)~効率重視経営者が招いた罪
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2011年5月 2日 07:00

 6月の東京電力株主総会で清水正孝社長の引責辞任は必至。「チェルノブイリ」と並んでいまや「フクシマ」で世界に知られる同社福島第一原発事故は、初動から現在に至るまで指揮命令系統の混乱により、長期にわたる放射能流出が確定。チェルノブイリは大気を通しての北半球汚染だったが、放射能汚染水を海にタレ流すフクシマは地球全体を汚染しかねない。菅首相と並ぶ指揮官たる清水社長はコスト重視型とされるが、それが事態収拾を遅らせたとすればその罪は辞任して済むものではないだろう。

 フクシマは3月11日の震災発生後間もなく水素爆発が続いたものの、チェルノブイリのような水蒸気爆発あるいは核爆発と9日間にわたる火災による放射能(放射性物質)の爆発的放出には至らなかった。しかし、炉心や燃料プールで剥き出しになって溶融する燃料棒を冷やすため、ひたすら注水作業を繰り返す先の見えない絶望的状況に変わりはない。

 NHKをはじめとするテレビ各局は、いまや何事もないかのように通常放送に戻り、フクシマの状況を伝える時間が極端に減った。しかし、事態は何も変わってはいない。これ以上の燃料溶融を止め、圧力容器や格納容器の底が抜けるような事態を防ぐための時間との戦いが続いている。その間にも大気への放射能流出は続き、1号機から4号機まで各炉に注入される大量の水は放射能汚染水となって海に流れ込んでいく。

 政府(原子力安全・保安院)が原子力事故の国際評価尺度をチェルノブイリと同じ「深刻な事故」を意味する「レベル7」に引き上げたのは4月12日。その日、斑目春樹原子力安全委員長に発表のタイミングを質すと「国際基準にしたがった」、といかにもその時点で機械的に判断したかのような口ぶり。しかし、3月12日に「レベル4」(所外への大きなリスクを伴わない事故)としたことにはその認識の甘さに、そして水素爆発が続いた後の3月18日に至ってなお「レベル5」(所外へのリスクを伴う事故)に留めたことにはただ呆れるほかない。

 それというのもテレビに登場する御用学者は別に、良心的な学者や研究者の間ではあの時点ですでに「レベル6」(大事故)以上、「チェルノブイリ相当」が共通認識だった。案の定、原子力安全委員会も3月20日過ぎにはすでに「レベル7」の判断を下していたにも関わらず、官邸の独自判断か保安院の助言かはともかく、意図的に発表を遅らせていたことが判明。諸外国の日本不信をさらに増幅させた。
 しかも湧き出る放射能汚染水を断りもなく海にタレ流す至っては、各漁協は当然ながら国内全魚業関係者、および近隣諸国から日本政府と東電が刑事告訴されてもおかしくはない。

 東電は4月17日、事態収拾にまず3カ月、次ぎに3~6カ月、とトータル6~9カ月という2段階工程を発表したが、想定通りに事が運ぶ保障はない。1~4号機まで各原発の現状は先のように依然一進一退で、いつ何が起きるかわからない。あと2カ月もすれば日本は梅雨入りする。大気中の放射能は地表に降りそそぎ、その多くは雨水となって川から海にそそぐが、残りは土壌に染み込み、地下水を汚染する。そして夏が過ぎれば台風シーズンとなり、豪雨はもとより風向きは予測もつかない。

 そんな現状からいえば20km圏内はもとより、30km圏内の緊急時避難準備区域や飯館村など計画避難区域の住民が帰宅できるのはいつになるか、まったく予測出来ないのが実情だ。そもそも一般人の年間被曝許容線量1ミリシーベルトを緊急時とはいえ一気に20 倍に引き上げる政府のその場しのぎを信じ、「20ミリシーベルト以下になったら帰ろう」という住民がどれだけいるだろうか。

(つづく)

| (後) ≫

<プロフィール>
恩田 勝亘(おんだ かつのぶ)
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。


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