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脱原発・新エネルギー

出遅れた"省エネ大国日本"活路は「同化燃料」にあり(後)
脱原発・新エネルギー
2011年11月 1日 07:00

 この研究は30年前に富永錘一郎氏によって進められ、1995年には青山学院大学工学部寺崎和男教授の協力を得て、学術実験のデータを確立している。約16年前の話だ。すぐに富永氏によって特許申請が行なわれたが、許可の遅れ、申請過程における富永氏の死去が重なり、一度は頓挫した。新たにその遺志を受け継いだ稲澤進、稲澤仁両氏による再申請が09年1月30日に行なわれ、その結果、昨年(2010年)3月12日に特許を得た。時代の要請からか、この異例の速さはとても興味深い。

<なぜ日本より海外の導入が先行?>
燃焼試験結果一覧 ここで"同化燃料"の特徴と効果を整理してみよう。その特徴は、以下の3つに集約できる。(1)油中水滴型の高品質同化燃料で性質が静・動的に安定しており、油水分離しない。(2)同化燃料の水粒子徑は1μm以下で均一に分散しており、安定した燃焼が得られる。(3)油70%、水30%に対しノンポルーアルファ0.25%を使用する。

 そしてその結果、次の4つの効果が得られる。(1)長期保存が可能で燃料供給ラインを腐食しない。(2)完全燃焼に近い燃焼が可能で、燃焼効率が大幅に削減できる。(3)NOx、CO2、煤塵の大幅な削減ができる。(4)同化燃料は、石油供給の既存インフラを使用できる。

 この"日本発"の革新的燃料の導入が、日本よりも海外の方で先行しているという噂は本当だろうか。ヴェスタエナジー社の特別顧問である満井忠男氏(77歳)は、熱く語る。「自分は国益のために、体を張ってこの事業を推進している。しかし日本は、経済産業省にしても、国土交通省にしても対応がとても遅い。このままだと、海外導入の方が先行してしまうかもしれない。とても残念なことだ」。

 国内官公庁の対応の遅れを横目に、すでに同社は台湾国立成功大学の協力のもと、台湾国営の「中国石油(CPC)」で4年間燃焼実験を継続中だ。燃焼排出物(CO2、NOxなど)の大幅削減は実証済みである。中国石油は、日本郵船と三井物産が液化天然ガス(LNG)の長期輸送契約を結んでいる、台湾最大の石油会社だ。

 さらに、最近の動きとして、中国大慶油田で燃焼実験を準備中である。ヴェスタエナジー社の横浜工場では、需要増に備えて添加剤工場の拡充を計画中だ。
 この動きと連動するかたちで、シンガポール、韓国、ブルネイと、「燃焼実験~導入」の動きが加速化している。同社では、並行して関係各国の特許を申請中である。

<ローリスク・ローリターンから脱出>
 資源の枯渇とエネルギーの絶対需要から、この燃料分野の研究と開発には長い歴史がある。低コストで環境に優しいエネルギー源には旺盛な需要が存在し、今後も変わらない世界的な趨勢だ。

 東電・福島第一原発の事故以来、日本はもちろん世界的に「原子力発電」は、そのほかのエネルギーへの転換を迫られている。しかし、「代替エネルギー」や「自然エネルギー」への転換には、相当の時間と技術開発が必要とされる。

 当面、原油依存率は、一段と高まっていくことが容易に予測できる。当然、需要と供給から原油高騰は避けられない。そのため、安くてCO2排出が少ない、環境に優しいこの種のいわゆる"エマルジョン燃料"に期待は高まるのだ。

 筆者は「3.11」の大震災後、産・官・学の「東日本復興イノベーション会議」に参画しているが、官が絡むととても動きが遅くなることは実感している。
 復興対策に「新技術の導入」というと、たしかにベンチャー企業の売り込み大会になってしまうきらいもある。しかし、10年後、20年後を見据えながら、それを選択、判断をしていくのが、官僚の仕事ではないのだろうか。しかも、迅速に。

 聴いていると、まじめに研究、実験を繰り返しているところも多い。被災地にとって、今すぐにでも役立ちそうな技術もある。しかし、導入は遅々として進まない。今回の取材を通じて、そのときと同じような感覚を持った。

 今後、こうした安価で安定的な"エマルジョン燃料"や"同化燃料"の開発が進めば、石油系燃料の省エネルギー化と環境負荷軽減につながる可能性が大きい。脱石油の一環としても、一石を投じる存在になるかもしれない。

 日本人は、"ローリスク・ローリターン"が好きな国民である。自分からゴタゴタに巻き込まれることを、潔しとしない。しかしこの言葉は、現代の国際環境はもちろん、国内環境にも馴染まない。官僚のサラリーマン化は、国民にとって最悪である。いつまでも本気になれない"ゆでガエル"体質に、国民全体が導かれてしまうからである。

 "省エネ大国日本"として環境と共生を図る新技術には、産・官・学をあげてのいっそうの支援が求められるべきだと思う。

(了)
【金木 亮憲】

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