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流通大競争時代

【流通】創業者死去のマルキョウ、 "脱個人商店"迫られる(中)
流通大競争時代
2011年12月 2日 07:00

 (株)マルキョウの経営が転機を迎えようとしている。発行済み株式の27%強を保有していた創業者の斉田弥太郎会長(85)の死去で、株の分散化は避けられない。一般株主が増えれば個人商店体質から脱皮し、企業価値増大に向けた経営を迫られることになる。成長戦略を欠き、業績の伸び悩みが続くようだと、流通外資や大手スーパーによる敵対的買収の標的になる恐れもある。

<低い株式市場の評価>
 株式市場の評価は厳しい。純資産を株価の時価総額で割った株価純資産倍率(PBR)は0.17倍しかない(11月18日現在)。前期末の純資産410億円に対し、市場は企業価値をその17%としか評価していないことを意味する。市場に顔を向けた経営をしていないことでは、同社と双璧のタイヨーの0.23倍を下回る。

 投資尺度を測る、1株当り純利益を株価で割った株価収益率(PER)は6.06倍。PERは投資資金を何年で回収できるかを測る尺度でもあり、同社の場合は6年余り。PERの数字が低いほど回収期間が短く、株価が割安であることを意味する。大企業が対象の日経平均は14倍で、タイヨーは42.13倍、MrMaxは545.45倍ある。

 配当利回りは3.37%。年15.5円配当は50円額面時代なら3割強配当で、配当性向も25.9%と決して株主を軽視しているわけではない。11年9月期末の自己資本比率は77.4%もあり、財務内容は超健全企業。

 投資対象としては安全で投資効率も高いのに、市場の評価が低いのは、経営トップが企業価値の増大を図ることに無関心なためだ。株価は今年に入り、2月517円の年初来高値を記録した後、11月18日終値で460円まで下がった。市場は同社の成長が期待できず、投資妙味に乏しいことを見通している。

<停滞続く業績>
業績財務推移_サムネjpg 業績は長期停滞が続いている。98年9月期に売上高1,005億円と1,000億円を突破したのをピークに、ほぼ一貫して右肩下がりを続けている。

 11年9月期(連結)は1.3%増の912億6,700万円と4期ぶりに増収に転じた。新店はなかったが、12店を改装した効果が出たことと、東日本大震災の影響で一時的にモノ不足になったことに支えられた。"震災効果"の一巡した下期だけを取り上げると、前年同期比0.3%減とほぼ横ばいだった。

 売上の伸び悩みで、利益率も低下している。
 本業のもうけを表す前期の営業利益は1.4%減と3期連続の減だった。粗利益率が20.74%と0.27ポイント悪化したことによる。同業他社は東日本大震災後のモノ不足で粗利益率を改善したのに対し、今年から主要店舗で3,150円以上(一部商品などを除く)購入した客に購入額の10%を還元するなど、値引き攻勢に出たのが影響したと見られる。

 経常利益は営業外収支の改善で1.4%増とわずかながら増益を達成した。
 収益力を示す売上高経常利益率はかつて3%を超え、タイヨーとともに九州を代表する高収益スーパーだったが、前期は2.13%と並みの水準に下がってしまった。売上の伸び悩みで販管費比率が上昇しているためで、前期は19.05%とやや改善されたが、3年前に比べ0.83ポイント上昇している。

 売上が停滞しているのもかかわらず、利益の下振れ幅が少ないのは、人口の集中する福岡都心部に店舗が多く、郊外立地のトライアルカンパニーやルミエール、コスモス薬品など後発の低価格業態との競合が少なかったこともある。

<前向き投資をせず>
大手食品スーパー_サムネ.jpg 安定収益を支えるもう1つの要因が、強い財務体質。前期の自己資本比率77.45%は全国の上場流通企業でもトップクラス。07年同期の58.70%から20%近く改善された。

 このことは、裏返すと手元の余裕資金が出店やM&A(合併・買収)などの成長のための前向きの投資に向かわずに、借入金返済に充てられてきたことを意味する。出店は過去5年間でわずか2店に留まる。前期はゼロ、今期も2期連続で見送りになる見通しだ。フランチャイズ店を含めた総店舗数は、07年9月期の102店から97店に減った。

 前期末の有利子負債は21億3,800万円と、07年9月期の111億9,200万円から8割強も減少。月商換算では0.28カ月と1カ月以上も縮小した。前期末の現預金は長短借入の2倍以上の55億円強あり、完全無借金経営に近い。

 財務体質が良好で収益力も安定しているのに、株価は割安となると、通常なら企業買収の格好の標的になる。PBRが0.17倍ということは、机上の計算だと株を買い占め転売すれば73%の差益が出る。

(つづく)

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