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流通大競争時代

【流通】創業者死去のマルキョウ、 "脱個人商店"迫られる(後)
流通大競争時代
2011年12月 3日 07:00

 (株)マルキョウの経営が転機を迎えようとしている。発行済み株式の27%強を保有していた創業者の斉田弥太郎会長(85)の死去で、株の分散化は避けられない。一般株主が増えれば個人商店体質から脱皮し、企業価値増大に向けた経営を迫られることになる。成長戦略を欠き、業績の伸び悩みが続くようだと、流通外資や大手スーパーによる敵対的買収の標的になる恐れもある。

<株の分散避けられず>
 九州の上場企業では、フタタが全国展開を進める紳士服専門店チェーン・AOKIホールディングスにTOB(株式公開買付)を仕かけられたことは記憶に新しい。AOKIはフタタの株価が割安なのに着目し、低コストで一挙に九州全域に店舗を拡大できると判断した。フタタはAOKIの買収を免れるため、同業のコナカの傘下に入らざるを得なかった。

 通常の上場企業なら、オーナー経営、サラリーマン経営を問わず、業績を上げることで株価を上げ、企業価値を高めることを求められる。企業価値が上がれば、敵対的買収に対する有効な防止策にもなる。

 マルキョウの経営陣が企業価値を高める努力をしないで済んだのは、もの言わぬ安定株主に守られ、その必要がなかったせいだ。筆頭株主の故・斉田会長、第2位で12.86%を保有する法人筆頭株主のヤマエ久野、斉田家の資産管理会社の池田興産(有)、西日本シティ銀行の上位4株主で56.35%を占める。

 斉田会長の死去で、保有株は会長夫人と長男の克行会長、次男敏男社長ら一族に相続される。会長の保有していた株は11月18日現在の株価に換算すると19億4,900万円。多額の相続税を考慮すると、株式の分散化はいずれ避けられないと見られる。

 株式が市場に放出され、一般株主が増えていけば、経営を見る市場の目が厳しくなりそうだ。経営陣も、内向き志向から市場に顔を向けた経営をせざるを得ない。

<新興勢力に挟撃さる>
箱崎ふ頭に完成した... 同社も、業績拡大に努めてこなかったわけではない。出店がない代わり、既存店の改装を推進、今期も大牟田市船津店の増床をはじめ4店で実施する。

 生鮮食品の売上構成比の引き上げにも取り組む。惣菜を含めた生鮮4品の比率は26.0%と平均的なSMに比べ10ポイント以上も低い。福岡県内の同業大手ではハローデイの49.3%はもとより、マックスバリュ九州39%、一部総合スーパー(GMS)を展開する西鉄ストアの37.0%を大きく下回る。生鮮比率が低いため、客単価は1,325円(11年3月中間期)と平均的なSMより300〜500円低い。

 利幅の大きい生鮮の比率が低いため、粗利益率は20.74%しかなく、九州のSMでは最も低い水準に属する。ちなみに、マックスバリュ九州は24.08%、ハローデイは24.32%。

 生鮮比率が低いのは、鮮度や品ぞろえで同業SMに劣るためだ。福岡市近郊にある生鮮4品の物流センターは、当初はコストダウンと時間短縮を実現した先進的なシステムだったが、その後ハローデイに代表される、インストア加工で鮮度を向上させる同業者に客を奪われてしまった。ハローデイのシステムはコスト高にはなるが、豊富な品ぞろえと鮮度で客の支持をつかんでいる。マルキョウのシステムは物流センターを経由する分、リードタイムが長くなり、鮮度も落ちる。

 コスト面でもその後登場したトライアルカンパニーの後塵を拝するようになっている。トライアルはマルキョウを上回る大型のプロセスセンターを開設し、大量集中加工と中国子会社から人件費の低い研修員を労働力として活用することでコストダウンを実現した。

 生鮮比率を引き上げるため、一部店舗で物流センターを経由せず市場や産地から直送した青果や鮮魚を販売する「朝市」を開催、価格でなく「味・鮮度」を訴えていく。

<市場軽視の経営は転機>
出店は2期連続で見送りへ.jpg 生鮮比率が低い半面、グロサリーでは強い販売力を持つ。菓子、酒類、日配を含めた一般食品の売上高は634億円で、福岡県内のSMではマックスバリュ九州の716億円に次ぐと見られる。

 これまではバイイングパワーを背景に仕入コストを削減、低価格販売を実現してきた。しかし、コスト競争力では、ディスカウントストアやコスモス薬品のEDLP(毎日低価格)にかなわない。コスモス薬品はグロサリーの売上が1,000億円を超え、バイイングパワーでもマルキョウを圧倒する力を付けている。

 マルキョウの最大の問題は、新たな成長戦略を持ち合わせていないことだ。既存店を改装し売上は横ばいを確保するのが精一杯で、拡大に転じる見通しは立っていない。DSやコスモス薬品の積極出店で、売上は横ばいを維持するのも難しくなる可能性が高い。

 もの言わぬ安定株主の保有比率が下がっていけば、中央の大手スーパーや外資による敵対的買収の標的になる恐れもないとは言えない。理論的には、70億円強のカネで100店近い店舗を手に入れられる計算だ。
 経営陣は、市場に顔を向けた経営を迫られることになることだけはたしかだ。

(了)

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