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濱口和久「本気の安保論」

サイバー攻撃の脅威を知れ(前)
濱口和久「本気の安保論」
2011年12月20日 12:06
日本政策研究センター研究員 濱口 和久

<サイバー攻撃は、れっきとした諜報活動>
 米国の国家防諜局が11月に米国議会に提出した「サイバー空間で米国の経済機密を盗む外国スパイ」と題する報告書によると、中露とりわけ中国を名指しして、中国の情報機関や企業が中国系米国人などを通じて米国内で情報収集していると指摘した。このことはインターネットだけでなく、旧来のスパイ活動の手法も駆使していることを意味している。中国が科学技術の格差を縮めるため昭和61年(1986)に「プロジェクト863」と呼ばれる政策を立ち上げ、組織的に米国の機密を収集してきたとも指摘している。

 日本へのサイバー攻撃も中国からのものが大半だ。昨年(2010)9月、尖閣諸島沖の中国漁船領海侵犯事件直後に警察庁のホームページがサイバー攻撃でダウンしたが、発信元の9割が中国からであった。一連の政府機関や防衛産業へのサイバー攻撃も中国の関与が濃厚とされている。政府機関や防衛産業などへのサイバー攻撃は、標準型攻撃と呼ばれ、特定の組織や人物に狙いを絞り、関係者を装ってメールを送りつけるものだが、そうした関係者リストは日本国内のスパイ網を通じて収集していると見られている。米国内と同様に日本国内でも中国によるスパイ活動が行なわれていることが想像できる。

<サイバー攻撃に対抗する米国>
 米国では、平成21年(2009)12月、大手ネット企業グーグル社が「オーロラ作戦」と呼ばれるサイバー攻撃を受け、金融、化学、メディアなど計33企業から大量の秘密情報が窃取された。
 今年(2011)3月には国防総省のネットワークから戦闘機や潜水艦などの機密情報を含む2万4,000個のファイルが盗まれた。いずれも中国からのサイバー攻撃と見られ、リン国防副長官は「国家による犯行」と断定し、国家間のサイバー攻撃が始まっているとの認識を示した。

2.jpg 同じく今年7月には「アノニマス」と名乗るハッカー集団が米国企業をサイバー攻撃した。同集団は、インターネット上の自由を主張し、セキュリティの脆弱な国防関連企業から9万件以上のメール情報を窃取した。これにより、米軍や政府をサイバー攻撃する手段を解明したと主張している。こうしたサイバー攻撃の脅威の高まりについて、パネッタ国防長官は、「次のパールハーバーは、サイバー攻撃でなされるだろう」と、頻繁に警告している。

 元国家情報長官のマイク・マッコネル提督は「中国は湾岸戦争の教訓から米国の衛星を破壊し、米国のネットワークに侵入する能力を得て米国に対抗すべきだとの結論に達した」と、述べている。マーク・ストークス国防総省元中国部長は、専務理事を務める安全保障研究機関「プロジェクト2049研究所」を通じて「中国人民解放軍の通信諜報とサイバー偵察の基盤」と題する調査報告を発表した。その中で、最近の米国や日本などの政府・軍関連機関へのサイバー攻撃の最大の推進役は人民解放軍だとする総括を明らかにしている(『産経新聞』11月24日付)。

 米国政府は政府機関の相次ぐサイバー攻撃を受けて、平成21年(2009)に国家サイバーセキュリティー・通信統合センターを設け、昨年には「サイバーコマンド」を発足させた。空軍宇宙司令部では、サイバー作戦将校を毎年400人育成する。海軍士官学校(アナポリス)は、巨費を投じてサイバー戦センターを設立する計画だ。今年5月には大統領府から「サイバー空間のための国際戦略」が、さらに国防総省がサイバー空間を陸・海・空・宇宙に加えて「第五の戦場」として新たな作戦領域と位置付ける「サイバー空間作戦のための国防総省戦略」を公表した。

 同戦略は日本や北大西洋条約機構(NATO)などの同盟国とサイバー攻撃への共同警戒システムを開発し、合同訓練を実施するなど共同防衛態勢をつくり、サイバー攻撃によって武力行使に匹敵する死傷、破壊が行なわれた場合には、軍事的な報復措置の対象になるとしている。

(つづく)

| (後) ≫

<プロフィール>
濱口 和久濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
 昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、現在、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。 公式HPはコチラ



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