<沖ノ鳥島をねらう中国>
中国が狙っているのは尖閣諸島だけではない。いまや日本最南端に位置する沖ノ鳥島にまで触手を伸ばし始めている。沖ノ鳥島海域は沖縄本島とグァム島を結ぶ直線のほほ中間に位置し、原子力空母を含む米海軍の艦船が日本周辺に向かって西進する最短の航路上にあり、極めて重要なチョークポイントとなっている。
もし仮に、沖ノ鳥島海域が日本の排他的経済水域(EEZ)から外れると、周辺海域は公海となり、中国海軍の潜水艦が大手を振って航行するようになる。そうなれば、沖縄有事や台湾有事の際、米海軍の艦船が沖ノ鳥島周辺海域を安心して航行できなくなり、日本の安全保障にも重大な影響をおよぼすことになる。
<沖ノ鳥島は「島」か「岩」か>
沖ノ鳥島を中心とした日本の排他的経済水域(EEZ)は、約40万平方キロメートルある。約40万平方キロメートルの排他的経済水域を守るためには、沖ノ鳥島が「島」である要件を満たさなければならない。ちなみに日本の国土面積は38万平方キロメートルだ。
実際、沖ノ鳥島は北小島(北露岩)と東小島(東露岩)と呼ばれる2島と、それを取り囲む珊瑚礁から構成されている。両方合わせてもわずか2坪ほどの面積しかない。しかも満潮時に海面から露出するのは、北小島が約16センチメートル、東小島が約6センチメートルにすぎない。一方、干潮時になると東西約5キロメートル、南北約1.7キロメートルの広さを持つ、茄子のような形の珊瑚礁が海面上に姿を見せる。
国連海洋法条約第121条第1項では「島」の要件として「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるものをいう」と規定している。
実際、沖ノ鳥島は満潮時に露出しており、国連海洋法条約が規定する「島」であり、日本は堂々と排他的経済水域を主張できる。
ところが、平成16(2004)年4月22日の日中外交事務レベル協議の場で、突然、中国が沖ノ鳥島は日本の領土であると認めるが、排他的経済水域を主張できる「島」ではなく「岩」にすぎないとの見解を示してきた。
中国が沖ノ鳥島は「島」ではなく「岩」とする主張は、国連海洋法条約第121条第3項に書かれている「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」という条文を根拠としている。
最近では中国だけでなく、韓国までもが一緒になって、国連大陸棚限界委員会に対して「沖ノ鳥島は『島』ではなく『岩』である」と抗議している。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、現在、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。 公式HPはコチラ。
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