参議院副議長の山東昭子議員は、我が国最大の健康食品・サプリメントの団体として知られる公益財団法人 日本健康・栄養食品協会の発足に関わって以来、20年にわたって業界の発展に尽くしてきた。一方、JAHFICの田中平三理事長は、公衆衛生学(疫学)の大家として健康食品に関わる監督行政の重要な検討会でたびたび座長を務めてきた。消費者の安全と安心に寄与する健康食品のあるべき姿について、両代表が初めて語り合う。
<特保に有効性・安全性の報告義務>
田中平三・JAHFIC理事長(以下、田中) 特定保健用食品(特保)に関する科学的知見の収集報告の義務化が消費者庁の「健康食品の表示に関する検討会」で決定しました。かつて、細谷憲政先生が日本健康・栄養食品協会(日健栄協)の理事長時代には2年に1回の更新義務がありましたが、その後4年に1回となり、さらに事業者の負担軽減を考えて取りやめになっていたものです。
ところが、代表的な食用油特保に発がん性物質の前駆物質であるグリシドール脂肪酸エステルが含まれていたことから特保の安全性が問題となり、2009年11月から2010年7月までの11回にわたって消費者庁で「健康食品の表示に関する検討会」が開催され、事業者側は特保製品の有効性や安全性に関する情報を報告せよという、かなり拘束力のある論点整理がなされました。事業者側からは、ほぼ全体の意見が固まった最終段階で「それはやめてくれ」という反対意見が出されましたが、もうこれを覆すことのできない時期となっていました。
山東昭子・日本健康・栄養食品協会会長(以下山東) そうですね、特保というのは一般の人たちにだいぶ浸透して身近に感じられてきたと思いますが、あくまで健康食品は医薬品ではないので、あまり厳しくしますと企業に経済的な負担がかかってしまいますし、結局のところ消費者の家計にもはね返って来るわけです。それを考えますと、あまり厳しくするのもいかがなものかと考えます。
田中 おっしゃるとおり、特保の関与成分といわれているものはほとんど害はないと思われるのですね。幸か不幸か、問題となった食用油については、私が当時の厚生省の新開発食品調査部会長として許可を出したものではありませんでした。しかしながら厚生省のほうには、リスクを指摘する投書が寄せられており、当時から問題視されていたのは確かです。
そこで私が新開発食品調査部会長のときに、国立がん研究センターと国立医薬品食品衛生研究所とに発がん実験を依頼することになったのですが、そのときは食用油の主成分「ジアシルグリセロール(ジグリ)」の純品についての発がん実験をやったためになかなか実証できなかったようです。2年前にドイツの研究所では、食用油に含まれる全成分について実験が行なわれたようです。ジグリは非常に臭いが強いというので、その脱臭過程に生まれてきた成分が「グリシドール脂肪酸エステル」です。
「グリシドール脂肪酸エステル」は体内で「グリシドール」に代謝されます。国際がん研究機関(IARC)は、この「グリシドール」を発がん性ランク2Aに位置づけてはいますが、人間にはがんの発生が認められたことはないということです。私は、品質管理が行なわれているならば本質的に食品というものは、過剰摂取しなければ大丈夫だという考えです。ですから、報告の義務化といわれても、そうそう企業側から出てくるものかと疑問です。
<プロフィール>
山東 昭子(さんとう あきこ)
(財)日本健康・栄養食品協会会長。参議院副議長。
11歳で芸能界入り、女優・司会・レポーターとしてテレビ、映画、雑誌で活躍。74年参議院全国区に32歳の最年少で初当選。以後、6回当選、参議院で環境委員長、外務委員長を歴任。自民党では女性局長、環境部会長をはじめ教育・福祉・住宅対策・外交関係を担当。90年、我が国6人目の女性大臣として科学技術庁長官に就任。自民党両院議員総会長、食育調査会長などを務めた。現在、「元気な120才を創る会」の理事として健康長寿社会の実現を目指している。
<プロフィール>
田中平三(たなか へいぞう)
一般社団法人 日本健康食品・サプリメント情報センター(JAHFIC)理事長。神奈川工科大学教授(応用バイオ科学部栄養生命科学科)。東京医科歯科大学名誉教授。医学博士。1965年大阪市立大学医学部卒業。同大学助教授、アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(ULCA)公衆衛生学部客員研究員を経て、85年7月より2001年3月まで東京医科歯科大学教授。01年4月より05年3月まで独立行政法人 国立健康・栄養研究所理事長を務める。厚生労働省や消費者庁で健康食品に関する検討会の座長を度々務める。著書、論文多数。
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