金融庁と信金中央金庫は、東日本大震災で被災した宮古信用金庫(岩手)、気仙沼信用金庫(宮城)、石巻信用金庫(宮城)、あぶくま信用金庫(福島)の4つの信用金庫に対し、昨年7月に成立した改正金融機能強化法に基づき、公的資金を含む計630億円の資本注入を決定したと正式発表した。今月20日に実施される。財務基盤を強化することで、再建を目指す地元の中小企業への貸し出し余力を高めるのが狙い。
約550億円を国が公的資金として注入し、残りは信金中金が負担する。信金に公的資金を予防的に注入するのは初のケースとなる。支援額は宮古が100億円、気仙沼が150億円、石巻が180億円、あぶくまが200億円。支援の枠組みは4信用金庫がそれぞれ優先出資証券を発行し、8~9割を預金保険機構、1~2割を信金中金が引受ける。引受額は国が547億円で信金中金が83億円の合計630億円。
改正強化法に基づく公的資金の資本注入は、昨年9月に仙台銀行(宮城県)300億円、筑波銀行(茨木県)350億円、12月に七十七銀行200億円で、今回の信金分を含めると総額1,480億円となる。
4信金は昨年11月に公的資金活用の検討入りを表明。年度内に合計400~500億円程度の資本注入を予定していた。今までは金融庁の特例措置によりに手をつけていなかった融資先の査定作業を年明けから本格化していた。
査定の結果、4信金は津波や原発事故の被災者向け債権が942億円に上り、当初見込みより大幅に増加し貸出総額の約半分を占めている。今後も融資先企業の倒産や事業継続の見通しが立たない企業が増えると見られることから、資本注入額を大幅に増加することにしたもの。
表向きは「取引先や預金者に安心感を与えるにはより十分な額を積む必要があり、あくまでも予防的な資本注入」としているが、ある金融関係者は「今回の630億円の資本注入は、12/3月期の決算を睨んだ一時的な措置であり、経営強化計画が予定通りに進まなければ、再度の資本注入もあり得る。思い切った金融再編の仕組みを構築しないと、公的資金の回収自体も厳しくなるのでは」との見方をしている。
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