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虚像に魅せられた果て~あるベンチャー経営者の末路
社会
2012年2月10日 16:00

 かつて福岡に壱岐国際航空という航空ベンチャー企業があった。同社は中上広志氏によって1999年3月に設立された。中上氏は大阪生まれの福岡育ちで、化粧品会社で7年ほど営業マンをして帰郷。北九州でパイロット養成や飛行機のチャーター事業の会社を手伝っていたとき、壱岐出身の父親から、エアーニッポン(ANK)の福岡-壱岐線の廃止に伴い、地元で路線再開運動が起きていることを聞いたのがきっかけだった。

 航空コンサルタントの指導を受けながら福岡-壱岐の航空運送事業免許の取得を目指し、2001年10月には念願の国土交通省の許可を得た。この間の資金調達では相次ぐ増資を行い、2億円弱のドイツ製の航空機も購入。注目の若手ベンチャー経営者とマスコミが持て囃したこともあり、就航前には派手なパーティーも開催されていた。

srm.jpg 01年11月には念願の就航を迎え、その第一歩を踏み出したのだが、事業はあえなく頓挫する。就航以来約2カ月間の平均搭乗率は38%。当初の採算ラインは65%であり、運航すれば赤字が膨らむ状況となった。同路線には同社より4カ月早く、長崎県などが出資する第3セクターのオリエンタルブリッジが就航しており、九州郵船の高速船を含めた三つ巴の争いに敗れたのである。就航から3カ月にも満たない02年1月中旬には運休となり、そのまま取引先への未払いや給与遅配などの問題を起こしながら雲散霧消した。
 
 2011年7月13日、大阪府吹田市のゲームソフト会社「ネステージ」を巡る水増し増資事件で、大阪府警捜査2課はネステージ前会長の光成英一郎容疑者ら7人を金融商品取引法違反(偽計)の疑いで逮捕した。増資に際して現物出資として受け取った旧「かんぽの宿」など3施設を過大評価し、資本増強を装った疑いである。債務超過による上場廃止を逃れる目的だったようだ。

 3施設は増資の引受先であるコンサルタント会社「クロスビズ」が、10年1月に合計千数百万円で取得したものだが、増資の際の評価額は13億円に膨らんでいた。この金額を基に「ネステージ」は「クロスビズ」に総額12億7,500万円の第三者割当増資を実施するという虚偽の増資策を公表したとされる。3施設を鑑定した不動産鑑定事務所の代表とともに逮捕された者のなかに「クロスビズ」社長の中上広志もいた。

 華々しく登場したベンチャー企業のなかで、生き残っていくのはごく僅かだ。一時期はマスコミにも頻繁に登場するが、そのうち見かけなくなってしまうベンチャー経営者も多い。一攫千金を夢見ながら転落していくベンチャー経営者の多くは、マスコミや周囲に持て囃されたことを成功体験として捉え、その状況を再び追い求める。その成功体験は、事業の成功を意味するものではなく、成功者の虚像が持て囃されているにすぎないのだが。

【緒方 克美】

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