「初期費用が高い」とも言われ、なかなか普及が進んでこなかった住宅向け太陽光発電。しかし今、国の強力な後押し政策や消費者の環境意識の高まりなどによって、大きな転換期を迎えているという。太陽光発電システムの法人向け販売事業を精力的に展開している(株)新日本エナジーの代表取締役社長・松尾洋臣氏に話を聞いた。
――御社のように、法人向けに太陽光発電の販売事業を展開している企業は珍しいですよね。
松尾 はい、セミナー方式で法人向けに太陽光発電商品のコンサルティングまで行なっているのは、今のところあまり聞いたことがないですね。本来なら商社がすることですから。私たちは、主にビルダー企業の営業社員さんたちに集まってもらって、太陽光発電についての一般的な知識はもちろん、エンドユーザーのオーナーさんにもより納得してもらえるような提案の仕方などもアドバイスしています。今年1月から本社に法人営業部を設置し、本格的に展開しています。
――太陽光発電というと初期費用の高さが気になりますが、価格は安くなりつつあるのでしょうか。
松尾 今、家庭用の太陽光発電は、国の政策で60万円/kW未満で販売しなければいけないことになっています。パネルの大きさによって1kW、2kW...などとありますが、普通の一戸建てだと3~4kWの大きさです。3kWを設置する場合は3kW×60万円=180万円以下になっています。ちなみに6、7年前は同じ3kWタイプで240~250万円ぐらいでしたから、ずい分安くなりました。さらに国の補助金(1kWにつき48,000円)と、県内の自治体ごとに補助金もつきます。北九州市が1kWあたり3万円、福岡市の場合は一律で1件あたり10万円です。
しかも電気の買い取り制度がありますから、今は電気を23円/kWhで買っていますが、自分の家でつくった電気は42円/kWhで売れます。ただしこれは、昼間の太陽光発電による電力から、自宅で消費した分を差し引いた電力(余剰電力)を売ることになります。
――ビルダー側も、積極的に太陽光発電を導入しているのですか。
松尾 太陽光発電の設備を自発的に採用しているのは、まだ大部分が大手の企業です。中身もよく知っていますし、お客さんに宣伝するのも慣れていますから。オリジナル商品をつくっているところもあります。しかし、ビルダー関連企業の7割にあたる中堅や零細企業の社長さんたちは、「良いのはわかっているけれども、どうやって自分のところでオーナーさんに提案していいかわからない」と戸惑っているのが現状でしょう。
私もセキスイハイムに16年いましたからわかりますが、住宅販売会社に太陽光発電の商品が入ったからといって、営業マンが喜ぶかというとそうでもないと思います。彼らが売りたいのは家であって、太陽光発電が加わって値段が上がると売りにくくなるわけですから。でも本当はそうじゃない。たとえば新築3,000万円の家に太陽光発電を足して3,200万円ぐらいになるとしても、月々の光熱費も含めた住居費は5,000~6,000円ぐらい安くなります。そこをちゃんと提案できるかどうかですよね。
私たちはビルダーさんに、「こうやって一緒に太陽光発電も提案すると、オーナーさんに喜ばれますよ」とアドバイスしています。オーナーさんが最終的に導入するかしないかは別にしても、間違いなく会社のイメージアップにはつながると思います。今まで通りのガス併用の普通の戸建てだけではなく、太陽光発電によるメリットを教えてあげられるかどうかだけでも、大きく違います。
最近は、マンションなどに設置するところも出てきています。弊社とタイアップしている北九州市のビルダーさんは、戸建てとマンションを手がけていますが、分譲マンションに「入居者還元型」の40kWの太陽光発電を設置しました。大分でも同様に80kWのものをつけたビルダーさんがいます。「普通なら光熱費が1万5,000円のところを、太陽光発電とオール電化なら毎月3,000円で済みますよ」というふうに宣伝ができます。しかもある一定規模の電力をつくることができれば、今後導入されることが決まった「全量買い取り制度」(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)も利用できるかもしれません。
これまでなら、純粋な建設コストだけを考えると「ガス併用、太陽光発電なし」が一番安く収まるんですよね。ですが、そこに実際に住むエンドユーザーのことを考えると、やはり太陽光発電のオール電化にした方がメリットはあります。私どもが今提携しているデベロッパーさんも、「入居者に喜んでもらえたら」という思いで分譲マンションに太陽光発電をつけて売り出したところ、予想より早く完売したそうです。
――太陽光などの新エネルギーを踏まえた、今後の住宅はどうなっていくでしょう。
松尾 太陽光発電はさらに加速して普及するでしょうし、そのうち自家電力をそのまま自宅で効率的に蓄電できるシステムも開発されるかもしれません。今もうすでに日産の電気自動車「リーフ」が、自動車から家庭に電力を供給するシステムを開発中ですよね。米国から始まったスマートグリッド(次世代送電網)を活かしたスマートシティ(再生可能エネルギーなどを効率的に活用した環境都市)のプロジェクトも、北九州など国内4カ所で動き始めています。
これからは、太陽光や風力、地熱などの自然エネルギーを少しでもうまく活用してやっていかないと駄目なんだ、という時代になってきています。そういうなかで、ビルダーさんもデベロッパーさんも、ある意味ゼネコンさんも含めて、"本物の企業"じゃないとこの厳しい競争を生き残っていけません。では、本物の企業とは何かというと、建物に住む人に対して、本当に良いものを提案できるかどうかではないでしょうか。今まで通り自社の利益を優先させてコストダウンにばかり力を入れるような姿勢では、遅かれ早かれ淘汰されてしまうでしょう。本当に社会に求められていることをしっかり見据えて、5年、10年と生き残っていくために、今が企業にとっての転換期―業界のあり方の過渡期じゃないかと思いますね。
<COMPANY INFORMATION>
■(株)新日本エナジー
代 表:松尾 洋臣
所在地:福岡市博多区博多駅南2-3-12
設 立:2006年2月
資本金:620万円
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