佐賀県鳥栖市の今村病院（旧今村外科医院）を経営する医療法人社団如水会（今村一郎理事長）が、（有）九州メディカルサービスなどが福岡銀行から総額４億2,000万円を借り入れた際に如水会が行った連帯保証は無効だとして、残債務２億2,218万円余の連帯保証債務が存在しないことの確認を求めた訴訟が福岡地裁で始まった。2011年１月27日に提訴され、３月８日に第１回口頭弁論が開かれた。

　如水会今村病院は、1974年に今村外科医院として開業し、現在は病床数179床、外来患者数年間９万9,000人、職員数380人。外科、消化器科、内科、脳神経外科、整形外科など診療科目は16に及び、糖尿病・もの忘れ・呼吸器内科・肝臓の専門外来も持つ。鳥栖市を中心に約60社の企業から産業医の委託を受ける有数の総合病院。『エコノミスト』(2010年12月15日号)の「全国版おすすめリハビリ施設１１１」に取り上げられたこともある。

　訴状などによると、2005年12月に九州メディカルサービスが介護付き有料老人ホーム新築資金３億円を福岡銀行から借り入れる際に如水会、如水会当時理事長の今村治郎氏、同現理事長（当時副理事長）の今村一郎氏が連帯保証人になった。また、（株）長生館が2008年１月に同行から１億2,000万円を借り入れた際に、如水会が連帯保証人になった。

　一郎氏は治郎氏の長男である。当時理事長だった治郎氏は現在、医療法人仁徳会今村病院（旧古賀病院）の理事長兼病院長を務める。紛らわしいが、治郎氏が如水会理事長を長男に譲った後、古賀病院の事業を承継して医療法人を設立し仁徳会今村病院と名称を変更したものだ。主債務者についてみておくと、九州メディカルサービスは、前記老人ホームのほかグループホームを経営（いずれも仁徳会の関連施設）。長生館は、グループホームなどを運営する会社だ。これら２社の代表は現在はいずれも治郎氏である。

　如水会は、社員総会決議や理事会決議を経ることなく、治郎氏が、自らが実質的に所有して代表権を行使する主債務者のために、代表権を濫用して勝手に連帯保証契約を締結したもので、無効だと主張している。福岡銀行に差し入れた社員総会議事録については、如水会は原本を所持していないし、それは偽造されたものだという。

　これに対し、同行は、（１）一郎氏、治郎氏個人の連帯保証の効力は争われていない、（２）総会決議について印影冒用、偽造の申し出がない、（３）一郎氏は当時如水会副理事長である－－ことなどをあげて、連帯保証契約は有効と、真っ向から争っている。また、長生館の債務については、提訴後の2011年２月３日付けで全額弁済済みなので訴えの利益がないと主張している。

　連帯保証人は、債権者から請求を受ければ直ちに弁済する義務が生じ、まず主債務者に請求するようにと主張することはできない。ただし、債権者が銀行であり、現実的には九州メディカルサービスが順調に返済を続けていれば連帯保証人に請求するとは考えられない。

　約定返済金額は、九州メディカルサービスは月278万円、長生館は月78万4,000円。介護付き有料老人ホームは、介護老人福祉施設（特別養護老人ホーム）や介護老人保健施とは性格が異なる施設だが、介護保険事業の経営は、一般的に人件費のウエイトが高く収入の55％～60％を占め、施設サービスでは人件費と施設建設費が経営ポイントといわれている。九州メディカルサービスが債務返済できずに連帯保証人の如水会が返済したことがあったのだろうか。

　そこで、なぜ今の時期になって連帯保証が無効と主張して連帯保証人から外れる必要があるのか、如水会今村病院に取材を申し込むと、「お答えできない」（事務長）との回答だった。

　訴えのとおり連帯保証が無効だったかどうか、今後の双方の主張立証から明らかになってくるが、訴訟に至る背景には病院経営・介護事業経営をめぐる問題が重く垂れ込めている。

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