<未来の自動車~炭素繊維の可能性>
挑戦のひとつの形が、「TEEWAVE AR1」と名付けられたコンセプトカーにある。東レの持っている先端材料をフルに活用し、最新鋭の電気自動車をイタリアのゴードン・マレー・デザイン社と開発した。F1やランボルギーニなど高級車に使われているクラッシャブルの運転席で衝突時の安全性を高め、外装部品などを軽量化し、従来の電気自動車の重さの約3分の2に。二酸化炭素排出量も約9%削減できる。開発、製作には、人件費、デザイン費などすべて込みで約3億円かかったという。いわば、「今の東レの技術を結集すれば、ここまで進んだ次世代型の車ができますよ」という世界へのアピールだ。
このコンセプトカーは、ゴードン・マレー・デザイン社の私有地をさっそうと快走。車マニアに言わせると、「よくぞ、3億円でこれだけのものを作った。5億円でも買いたいぐらい。展示会なんかに出したら、買いたいと言う人が続出するだろう」とのことらしい。
自動車に炭素繊維複合材を使うとなると、現在では価格1,000万円レベルのメルセデス社などの高級車になる。それ以下だと、コスト面で折り合わない。それを500万円レベルにまで価格を下げるため、複合材の加工スピードを上げるなどのさまざまなアプローチを行なっている。
500万円クラスの車は、世界に約500万台の需要があるとされ、仮に、そのすべてに材料を供給すると、約5万トンの炭素繊維複合材が必要となる。
現在、東レの年間の総供給可能量は約1万7千900トン。自動車だけで供給が追い付かないことになる。
炭素繊維複合材で自動車を製造すると、リベットなどの部品を溶接する過程がいらないため、工場の生産ラインそのものが変わってしまう。そのため、内燃機関を使用した自動車の製造工場を、すべて炭素繊維複合材使用の製造工場に変えるには、かなりハードルが高い。逆に、電気自動車などの生産工程が比較的新しいものであれば、内燃機関の自動車工場よりも、炭素繊維複合材を使っての生産ラインに乗せやすい。
電気自動車は走行距離を延ばすために軽量化を必要としており、鉄よりも軽い炭素繊維は持ってこいの材料だ。課題は量産性。いかに速く炭素繊維複合材を供給できるかどうかが、炭素繊維の自動車生産を商業ベースに乗せるためのキーポイントとなる。
各自動車メーカーは、本気で、炭素繊維を使用した自動車を販売まで漕ぎつけようと模索している。丈夫で、軽量。走行距離も延びるため、金属でできた従来の車よりもエコノミー&エコロジーだ。炭素繊維の黒い飛行機が世界の空に舞ったように、夢の"黒い自動車"が、公道を走る時代もやがて来るだろう。そう遠くない未来かもしれない。
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