<愛国主義者・郷土愛の塊の士が決別>
第一施設工業(株)は、半導体工場のクリーンルームで使われる輸送装置では、世界で8割のシェアを占めていた。北部九州では、鉄工業技術で海外に通用する数少ない会社である。この会社の篠原社長が「工場機能の大半を韓国に移転する」と発表したところ、「非国民」との批判・抗議が殺到したという。何とも軽率な盲動に走るバカな奴らだ。篠原社長の過去の経歴を知ったうえで批判しているのだろうか。同社長は1941年生まれの70歳である。高齢とまでは言わないが、『"円熟された経営者"の苦痛の選択』との考えがおよばないのだろうか!!
篠原社長は愛媛県生まれだが、幼い時から福岡で育ち、福岡大学を卒業後、1965年に事業を起こした。自社のことばかりでなく、業界の活性化のためにも尽力してきた。㈳九州日韓経済交流会理事長の要職もこなし、「中小企業も海外へ視野を広げないと明日はない」と警告を発してきたのである。これだけ業界の将来を真剣に憂える経営者も稀有であるし、郷土・福岡、日本を愛する人も珍しい。
しかし、経営者は会社を潰すわけにはいかない。福岡で、そして日本での経営が不可能であれば、やむを得ず決断するしかないのだ。
この半年、同社はことごとく国際入札で負けた。たとえば、5,000万円が原価の案件を同社は「儲けなし」の覚悟で値を提示した。しかし、韓国の同業者はそれよりも1割低い4,500万円で落札したのである。よーく精査してみると、韓国の業者はそれでも10%の500万円の利益を確保していることが判明した。結論から先に述べれば、「社会的インフラ、人件費、租税公課などトータルで韓国と比較すれば、コストが20%高い」ということである。
無策でいれば、必ず『売上ゼロで倒産する』か『採算割れの受注による圧死』という地獄の道をたどるしかないのだ。この厳しい現実を野放図にする国の経済政策も糾弾されるべきである。
<成功の見本になる>
篠原社長は淡々と語る。
「コダマさん!!誰がこの歳(70歳)になって、好きで福岡を離れますか。日本の得意先は潰れたか、工場を海外に移転させてしまっています。国内には売るところがありません。それだけドラスチックに、国内の空洞が進んでいます。マスコミもこの深刻さを報じる責任があるのではないでしょうか」。
たしかに、国内に得意先がなければ、国外に活路を見出すしかない。一番の売り先は、中国・台湾・韓国の順番になっている。その他の地域は東南アジアとなる。
会社では、15年前から意識的に留学生の外国人を採用してきた。中堅幹部から幹部の道に到達し始めた人材もいる。4カ国語を操る社員も目立つ。
篠原社長が驚いたことがある。韓国での人材の補強を検討していたところ、韓国人の社員に、「韓国かタイへ」の赴任を打診してみた。すると、「私をぜひ、タイに行かせてください」と申し出てきたのだ。
「日本人の若者はまったく劣化してしまった。人材面でも、ますます外国人に頼らざるにはいられなくなるだろう」と篠原社長は言う。
韓国へのシフト換えは、けっして消極的な意味合いではない。篠原社長は胸の内までは明かさなかったが、コリアダック(ナスダック韓国版)への上場も目論んでいる様子がうかがえる。篠原社長は、北部九州の同業者からは『リーダー格』と目されてきた自負もある。「必ず韓国移転を成功させて、海外進出のお手本になるぞ」という、秘めた強い決意を抱いているようだ。
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