放射線が体にいいのか悪いのかは、所説によって異なるが、大量に浴びたら死にいたることは間違いない。そのメカニズムはこうだ。生物の設計図である遺伝子が放射線の体当たりによって遺伝子を構成している塩基の鎖が断ち切られるためである。設計図が改変されてしまうため、細胞は正常な分裂ができなくなってしまい、中途半端なできそこないの細胞、ときにはガン細胞と呼ばれるものを生み出してしまうのである。
一時に多量に浴びる急性障害の場合は、多量の放射線によって致命的な細胞破壊が徹底的に行なわれて死にいたるものを指す。急性障害と言うと、浴びてすぐにどうにかなってしまうようなイメージがあるが、そうではない。1999年のJCO臨界事故で亡くなられた被曝者の一人は、16~20シーベルトを浴び83日後に亡くなられた。爆弾が爆発して死にいたるのとは様子が異なるのである。
「ただちに影響を及ぼす数値ではない」
というのは長期的にはわからないという逃げを含んでいる。長期的な影響は正しく測ることができないので、わからないとしか言いようがないのだ。放射線によって設計図の改変された細胞が人体に害のある細胞をつくったとしても、人体の免疫機構というのは非常によくできているため、悪玉細胞自体を排除してくれる。また、ガンなどは被曝特有の病ではない。ベータ線熱傷などのように、確実にそれが原因と特定できにくいのである。これが低線量被曝の危険性評価が分かれる理由である。
※記事へのご意見はこちら