脱原発活動は、自覚ある市民の創出になり得るか――。
2011年3月11日の東日本大震災は、我々日本人の価値観を変える大きなきっかけになった。東京電力・福島第一原発事故により、原子力発電の是非とエネルギーシフトという岐路に立たされ、私たちは急速な変化を求められている。あの過酷事故を経て私たちはどう変わるべきなのか、「第2のフクシマ」を繰り返さないために何をすべきなのか―。「原子力ムラ」に対し、毅然と立ち向かう人々の姿を追うことで、その答えが見えるはずだ。
<目指すは1万人の原告団>
九州には、もう1つ玄海原発の運転差止めを求めている団体がある。それが、「原発なくそう!九州玄海訴訟」だ。この団体では、九州をはじめとする全国の弁護士が弁護団を結成し、最終的には1万人規模の原告団を目指している。
原発事故後、福島の地元住民は、避難を余儀なくされ、その数は11万人を超えた。また、そのほかの放射能が高い地域からの避難者も合わせると、全体で15万人を超えるという報道もある。そういった事態を受けて、原発事故によって被害を受けた人々の財産や仕事、失ってしまった人とのつながりなどを「少数の人たちのやむを得ない被害」などと片付けられるものではないと、同団体で、主に実務を担当している佐賀中央法律事務所の東島浩幸弁護士は話す。さらに、2011年6月に、玄海1号機の脆性遷移温度が、98℃まで上がっているという報道があったことや、6月下旬になると、玄海原発から再稼動しそうだという噂が出たことも、弁護団の結成する大きな要因になったという。
「原発なくそう!九州玄海訴訟」の活動コンセプトとして挙げられるのが、「多くの原告で訴える」ことに重きを置いている点だ。原告団は、急速に増え続け、九州を中心に3月中旬の時点で、3,000名を超えている。
今年1月31日に提訴をし、東日本大震災から約1年となる3月12日には、第2次訴訟を行なった。原告団は、最終的には1万人まで増やすことを目標にしているそうだが、それも夢ではなさそうだ。東島弁護士は、「福島原発の事故は、原発推進という国策の末路。原発が安全であるという虚偽を振りまいた国や電力会社、およびそれに関わる人々の責任を徹底的に解明することによって、玄海原発が安全だと言えるのか、あの事故は福島原発だけの問題とどうして言えるのかということをハッキリさせるつもりです。それにより、原子力発電における安全性の考え方を根本から変えたい」と、意気込みを語った。
これまで、数多くの原発裁判が行なわれてきたが、最終的な司法の結論として、常に原告団が負け続けてきた。しかし、その大きな敗因の1つが脱原発を主張している人たちが少数に留まってきたということであれば、今回の訴訟には勝機がある。この裁判で、原発推進という国の方針を変えさせて、日本政府は、原発事故後も、原発を輸出する方針を変えていないが、このモラルハザードも是正したいと、東島弁護士は話す。
また、この訴訟の注目すべき点は、被告が九電のみではなく、国でもある点だ。玄海原発4基の差止めを求めるとともに、慰謝料も請求している。国を訴えるのは、玄海原発を直接運転している九電だけでなく、国が通常の産業政策としてはあり得ないほどの後押しをしており、原発を国が動かしているのも同じであると解釈に基づいている。
しかし、「従来の行政法という法律分野の理屈からいうと、成り立たない恐れがあるので、慰謝料を請求することによって、国を『被告』という立場から逃さない狙いがあるのです」と東島弁護士は解説する。
原発の運転差止め訴訟の原告団に集まる人々の動きは、まさに市民運動であり、原発を停止させるための大きな原動力になるに違いない。
※記事へのご意見はこちら