ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

経済小説

REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(13)~1カ月ごとの借換(前)
経済小説
2012年5月14日 07:00

<1カ月ごとの借換>
 先に触れた札幌の土地は、福岡今泉の土地とは別のメガバンクから融資を受けていた。

hito_4.jpg 私は5月の末に、札幌の土地の融資期限の問題で、岩倉社長といっしょに東京に出張した。社長は、3月まで東京支社長で、札幌の土地の融資も、その当時に東京のメガバンク支店から引き出したものだった。
 支社長時代に岩倉社長は、このメガバンクの支店長と懇意になり、札幌の土地仕入に当たり融資を申し込んだのだった。その条件は1%半ばと、財務力の薄い新興デベロッパーに対する金利としてはいいものだった。しかし融資期間は竣工までではなく、土地を開発型SPCに移すまでの短期であった。その期限は6月末日だった。

 開発型SPCというのは、建物の完成まで、土地を保有するペーパーカンパニーだが、竣工した後の売却先が決まっていれば、銀行は、そのペーパーカンパニーにも融資をする。しかし、当該札幌物件の竣工後の買い手は、これまたローンのつかないファンドしかなく、従って契約など無理だった。このため、当該メガバンクの融資期限を延ばしてもらうのが、唯一可能なことだった。

 しかし、このメガバンクもけんもほろろなもので、土地取得時には平身低頭、是非支援をさせていただきたいと岩倉支社長に申し出ていたのが、このように情勢が変わると、融資期限の延長を一切認めない。

 5月下旬、私は岩倉社長に同行して、当該メガバンクの支店を訪問した。
 メガバンク側は、支店長から担当者まで4名で私たちに応対した。
 ここで岩倉社長は、札幌のプロジェクトについて、以下のように要請した。
 「この物件を竣工後買いたいというファンドは存在するが、ローンが降りないため売買契約を締結できずにおります。これが、買付申込書で。このように買手がついておりますので、6月までの融資期限を、竣工まで延長していただきたい」
 そういって、手元のバッグから東京の仲介業者の名義による買付申込書を示した。

 しかし、このメガバンクは以前より、岩倉社長に対しても、早期に土地を処分してください、大丈夫ですか、と懸念を投げかけてきており、これに対して社長からも、「大丈夫です。買い手は来ています」という回答をするに終始してきていた。
そのようなこともあり、支店長は「当行は、当初より今回のご融資は、開発型SPCを立ち上げるまで、という条件で提示させていただいておりますので、竣工までの延長の可能性はございません」と明言したのだった。

 この支店には、切れ者の副支店長がいたが、この副支店長が補足して述べた。
 「早々に土地の売却を願いたいのは、支店長より申し上げた通りで、6月末までの売却が不可能であれば延滞していただくよりほかありません。しかし、御社は上場会社ですので、決算資料にGC注記がついて、それが信用不安のきっかけとなる、ということになれば私どもがその引き金をひいたことになってしまう。そのようなことは本意ではありませんので、まずは、御社の年度末までの資金繰表と全物件の販売状況を提示してください。私どもも、融資期限の短期の延長については検討できると思いますので」

 「そうさせていただきます。売却交渉の状況についても逐次報告させていただきますので、検討のほどよろしくお願いします」と、私は述べて、岩倉社長とともにこの銀行支店を辞去した。

(つづく)
【石川 健一】

≪ (12) | (14) ≫

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


※記事へのご意見はこちら

経済小説一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル