低線量被曝に関して覚えておくべきことは、低線量被曝の健康被害は、統計的、学術的に確定していないということだ。どれだけの量と接したら、どれだけの影響が出るかは、わからない。人の体は精緻を極めたものだ。算数のように、「1を足したから1の影響が出る」というものではない。純粋に「被曝が原因で何々病にかかった」と言い切ることは、低線量の場合には非常に難しいのである。「被曝が原因」と言い切るためには、「遺伝的要素ではない」「生活習慣ではない」「ストレスではない」など、「その他の要因が原因ではない」ということを証明しなければならないからだ。
アスベストの場合は、特殊な肺線維腫に罹患(りかん)するために原因を特定することができるが、放射線の場合は特定の病気に罹患するわけではない。大きなものはガンだが、それでも「放射線被曝独特の特殊なガン」というものではない。そのため、長期的に地域を眺めて統計をとり、そして「これが影響なのではないか」と推定するよりほか方法がないのである。これが、低線量被曝の影響が確定しない原因であり、さまざまな論が立つ所以(ゆえん)だ。
ちなみに、玄海町および隣接地域である唐津市で、「原発由来の病気ではないか」と話題に上ったことがあった。いわゆる「白血病問題」である。白血病の患者数が全国平均の6.0人/10万人に対して、佐賀県では9.2人、唐津保健所管内では16.3人、玄海町では61.1人であり、「この高い罹患率の原因は原発によるのではないか」と、唐津市の浦田関夫市議が2009年に、唐津市議会一般質問にて問題提議したものだ。
この件は、結局、「原発由来のものではなく、ウィルス性の風土病である」と結論づけられたようである。
たしかに、精確な統計を取ろうにも、玄海町には住民が6,000人しかいない。分母が少ないために、少数の患者が大きな割合を示すことになる。そのため、誤った結論が導かれることも十分に考えられる。
さらにこの件のように、ウィルスなどほかの要素の可能性も排除できない以上、「低線量被曝が原因だ!」と言い切ることはできないのである。何か引っかかるものがあるが、そのような理屈が結論として採用されているのだ。
「そんなことはない、放射線が原因で健康が害されている」と主張することはできる。けれども、たとえ統計調査を行なったとしても、結果は「推定無罪」なのだ。今、政府が発表している低線量被曝に対する考え方も、確定したものがないという土台の上でのものである。論が確定していない以上、政治判断で決定するよりほかないのは道理だが、その決定は国民の健康を最優先するものであってほしいと願うばかりである。
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