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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(14)~1カ月ごとの借換(後)
経済小説
2012年5月15日 07:00

 翌週、私は、会社の資金繰表と全物件の商談状況の資料を持参して上京した。
 説明の相手は、あの副支店長である。

bgns_5.jpg デベロッパーの資金繰は、銀行借入で物件を買い、あるいは建物を建てて、物件を売却した時に、その代金で銀行借入を返済する、というものである。そして、今は、物件が売れないから金も返せない、ということになっているわけである。
 しかし、そういう状況でも、各物件の販売状況を子細にみると、時には、売れる物件もある、その物件の売却額と銀行融資額の塩梅によって、売った時に会社に資金が残る物件もある。
 銀行が、資金繰表と全物件の商談状況表を求めるのは、まさに、物件を売って資金が残ったときに、そこから少しでも回収(内入れ)を図るためである。それに、無担保の在庫物件があれば、それに抵当権を設定することもできる。
 要は、当社の不動産の売却を洗いざらいチェックして、むしりとれるものはむしりとろうということである。 

 このようにして、1カ月ごとに延長をしてくれたのだが、後に8月に今泉の土地が売れて利ザヤが生じることがわかると、8月の借換時に一部返済をするように要求された。もちろん、いろいろな資料で資金繰の困難を明らかにして、返済額を圧縮したのだが、それにしても1カ月借換という厳しい立場におかれると交渉の立場が極めて弱くなる。もし、このメガバンクの頑なな態度には、改めて今回の金融収縮の厳しさを思い知らされる思いがした。

 もし、私が次回同じ状況に置かれたら、このメガバンクに対しては延滞を敢行してでも資金を手元に残すことができるだろう。金融円滑化法の施行もあって、延滞即担保権の実行ということには100%ならないといってよい。
 ただ、上場会社としての世間体を維持しなければならない管理責任者としては、「それではどうぞ延滞してください」という脅し文句にはすくんでしまう。しかしひとたび倒産まで経験した身となれば、何ということはない。

 ただし、それも、取締役会全員での、上場廃止を覚悟してでも手元に資金を残そうという決意が必要である。まだ、上場会社として存続していこうという未練があるうちは難しいかもしれない。

 リーマンショック後不況の後半に破綻したデベロッパーのなかには、全銀行に対して元利払をストップしつつ、なお3年も東証に上場を続けたところもある。

 当社も、脅し文句に屈せず、「それでは延滞します」としていれば、他の物件で利ザヤが発生したときの内入れも、無担保土地の入担がなくなり、そうしていれば資金が少し浮き、民事再生までの寿命も、もう数カ月伸びたかもしれない。もっとも元利払をストップしつつ生き延びた前述のデベロッパーも、リーマンショック後、株価もほとんどつかない状態で3年粘った末に破綻してしまったのだが...。

(つづく)
【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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