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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(15)~全工事のストップ
経済小説
2012年5月16日 07:00

<全工事のストップ>
 それはそうと、私は5月のこのメガバンクとの東京での折衝から帰社して、すぐ、現在進行中の全工事を止める措置を取った。

img_9.jpg 当社は昨年来、新建築基準法の影響で、仕入れた土地の商品化のスケジュールが大幅に遅れていた。それを取り戻すために必死の工程管理をしていたのがついこの1~2月のことである。その時点では、ここまで金融収縮が厳しくなるという認識はもっていなかったので、各物件とも5月までは必死で確認申請あるいは工事を進めていた。それも、商品たるビルを完成させて今期から来期の売上を達成するためである。

 しかし、5月の交渉では、竣工までの融資という従来なら当たり前の内容を頭ごなしに否定された。

 私は痛切に思った。

 当社だけがこのように銀行から厳しいことをいわれているはずはない。他の不動産会社や貸ビル会社も同様にされているはずである。と、いうことは今後も物件は簡単にも売れない。だから今期から来期の業績を犠牲にしてでも、とにかく手元に資金を残さなければならない、という判断をするに至ったのである。

 そして、社長・会長にも報告したうえで東京出張の翌日、臨時の取締役会を招集し、そのことを切り出した。

 「昨日、東京のメガバンクに社長と行って札幌土地の融資延長をお願いしましたが、まったくけんもほろろの状態でした。当社からお願いしている竣工までの期間延長は不可能です。良くて3カ月の延長でしょう。これだけ不動産融資が絞られている、ということです。ですから、当社も追加融資などはあてにできなくなることは確実です。物件を竣工しても売却先がなければ工事代金も払えないし、それ以前に着手金や中間金を払うのももったいない。ですからこれから全工事をストップしたいと思います。よろしいでしょうか」

 各取締役から特段の異論もなく、工事ストップは了承された。同時に、今後、土地のままで売れるものはすべからく処分していくことを決めた。

 その日のうちに、各ゼネコンの現場に指示が行き渡り、当社の新築工事は、もはや中間段階まで工事が進んでいた2物件を除いて、すべて中止された。

 通達するに当たっては、「あくまでも竣工後の売却先が確定し次第、工事を再開するまでの、一時的な休止である」ということを伝えるようにしたが、各ゼネコンともそのようには受け止めず、動揺が広がった。

 前後して、銀行にも同様の内容が財務担当者を通じて伝わった。

 これをきっかけに、それまでは当社は一部の銀行とやむを得ず借換えを交渉しているだけだったのが、全取引銀行が、当社に対し危機モードに突入することになった。
これにより、従来、当社は各銀行に対しては、抵当権を設定している土地に関する進捗状況以外には、通常の業績開示資料を届けるだけだったのが、逆に各行とも当社に対して、年間の資金繰表の提出を求めるようになった。
 各銀行とも、それまで当社の物件販売力には何ら不安を抱いていなかったので、この報を知って「DKホールディングスよ、お前もか」という思いだったようだ。

この臨時取締役会では、私は以上のことに加えて、営業社員を東京に長期出張させて、キャッシュリッチな先への営業を強化することと、いつも最後に2~3棟が売れ残ると頼みに行くような親密なお客様に対して、今回は先に売れるものから売っていくべきことを申し上げたが、営業系の役員には、まだそこまでの危機意識はなく、馬の耳に念仏といった感じだった。

(つづく)
【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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