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【再考】PCB廃棄物処理、期限内完了は不可~30年間放置された負の遺産(5)
社会
2012年5月17日 07:00

<「化学式処理」04年にようやく開始>
 世界的に見ると、化学処理を選択したのはまれなケース。燃焼でダイオキシンなどを出す心配がないなど安全面での利点はあるが、コストがかかるうえ、時間もかかるというデメリットがある。

 その化学処理がようやくスタートしたのが2004年。福岡県北九州市の施設で始まった。室蘭、東京、大阪、愛知(豊田)に施設が設置されたものの、全国的に見ると先駆けとして始まった北九州事業所以外は稼働率が低く、想定よりも処理は遅れている。濃度の濃いPCBの入っている高圧トランス、コンデンサともに、操業開始時に予定していた10年度末までの処理量の約5割しか処理を終えていない。

 各施設では、16年までに処理を終わらせるという地元との約束のもとに処理を進めているが、施設の処理能力に見合うだけの処理が行なえていない。近年は、予定していた年間処理予定量の約8割程度の処理。つまりは、施設の能力の約80%しか発揮できていない。
 民間業者の新規参入も可能だが、PCBは、すでに製造も輸入も禁止されているので、全体のパイは限られている。そのため、新規に参入する業者は現在のところ、化学処理方式では出てきていない。

 環境省では「国主導で、確実に安全に行なっている」としているが、そのスピードはあまりにも緩やかだ。「化学処理」を選んだものの、この方式には、ほとんど先行事例がなく、技術的課題が、04年に操業してから初めて明らかになるなど、多くの課題が残されている。

<16年までには到底終わらない>
 01年の「PCB廃棄物特別措置法」で定められているように、2016年7月までに処理を終えなければならないことになっている。だが、現在終わっているものと、残りのPCB廃棄物をもとに出した推計では、それまでに終わらせるのは、到底不可能だ。処理施設を建てるのにも時間がかかったが、処理自体に関しても、想定よりも多くの遅れが生じている。

 その理由として、

・そもそもの処理開始が遅れた
・作業員の安全確保に時間を要した
・PCBが想定以上に揮発するため、安全な作業確保に時間を要した
・PCBのしみ込んだ木、紙などを安全なものに処理してから廃棄するため、時間がかかった
・段階的に処理する際に、予定よりも濃度が落ちないことがある
・化学処理の方式も、全国で統一されていない。各事業所により、脱塩素化分解方式、水熱酸化分解方式など違った処理方式で行なっているため、スピードがまちまち
・長期の保管で高圧トランスなどの処理物が劣化。内部構造が多種多様におよぶため、処理スピードが遅れる


 などの原因が挙げられる。

 さらには、全国的に処理できる施設が少なく、所有している事業者が「処理に出したいのに出せない」などのケースも出ている。その場合、処理するべき廃棄物を持っている事業者も、保管を余儀なくされているのが現状だ。

(つづく)
【構成:山本剛資/文・岩下昌弘】

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