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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(19)~第1半期決算
経済小説
2012年5月22日 10:00

<第1半期決算>
b_2.jpg 上場会社であったDKホールディングスでは、2008年度より、正式な四半期決算の開示がスタートした。当社は3月決算なので、第1四半期の締めは6月末日に来る。その後45日以内に監査法人がレビュー済みの四半期決算を開示しなければならなかった。

 08年3月期決算は、大分ホテルの売り残しという問題はあったが、いちおうGC注記なして開示できた。しかし、監査法人の審査会では、それでよいのかどうか、当社の継続可能性について相当に議論がなされたと聞いていた。

 このため、GC注記がつくことは不可避と思われたが、それにしても、GC注記は、経営困難な企業が監査証明をとって開示を行なうための免罪符ではない。あくまでも、厳しい状況ながら向こう1年の資金繰の見通しが立っている、ということが前提となる。

 これに加え、当期より棚卸資産の時価評価という新たな会計基準が導入された。これは、各個の棚卸資産(在庫)の販売予定価格を会社で推定して、もし粗利益レベルで赤字になるようであれば、その分先に予定価格(在庫の評価額)を下げなさい、というものである。

 この結果、第1四半期のとりまとめはパズルのような様相となった。

 まずは、各物件をいくらで売れるかの推定。

 これは当然に営業部門で推定することになるが、これが非常に根拠が薄い。
 買付申込でも入って入れば、その金額を販売予定とすることができるが、まったく商談ができていない物件や、商談していたとしても、買手の希望額が著しく低い物件があった。そういう場合はそれが市況である。市況を無視して、原価プラス粗利益で売ります、といっても、監査法人は絶対に了解しない。

 そこで、ひとつひとつの物件について、営業責任者と管理部門と監査法人でひとつひとつ話し合い、販売予定価格を決めていったが、営業部門で推定した当初の販売予定額はほとんど認められなかった。

 こうして物件の販売予定価格を下げていくと、当然に収入見込額が下がっていく。
 そうなると向こう1年間資金をつなげない、という現実的な問題が生じる。また、予定価格を下げる、ということは資産の部に計上されている棚卸資産の額を減らす、ということなので、値下げするにつれて総資産が減少し、その分純資産も毀損する。

 また、決算取りまとめの過程では、営業現場が責任者に不動産の実勢価格の報告をしていたのを、責任者がそれを握りつぶしたのではないか見られるような事件も起こり、現実から逃げる悪弊が少なからず発生しているのではないかという疑念も生じた。

 こうした結果、今期の利益見込みは赤字、そうなると、繰延税金資産の取崩が発生してさらに赤字拡大と、ドミノ倒しのように財務指標が悪化した。その結果、第1四半期は純利益で20億円の赤字となった。ここで取締役一同が退職慰労金を返上することでなどで少々を改善したが、昨年度末に34億円だった純資産額は、この時点でわずか13億円まで減少した。

 私は、監査が終了したのち、監査法人の責任者から言われた。
 「今回、棚卸資産の減損もありましたので、各役員にヒアリングをしましたが、皆さん他の方の批判ばっかりです。せっかく価格を下げてでもきちんと物件を売り切ろうとしているのに、最新の営業報告書を拝見すると、販売予定価格も古い資料のままです。売却の期限も、意思統一されていません。そのようなことでこの難局を乗り切るのは難しいと思いますので、一度石川常務からも、その旨ご徹底をお願いします」

 たかが資料とはいえ、その資料をもとに各営業社員が販売期限や予定価格を確認するわけだが、その基本動作ができていないため、いつまでにいくらで、という営業活動の根本が崩れてしまっている、という指摘であった。
 そのことは伊崎専務にお願いし、専務の名前で全員に、各物件の販売期限と予定価格を徹底していただいた。

(つづく)
【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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